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【米菓メーカー・トップインタビュー】亀田製菓㈱ 代表取締役社長 COO 佐藤 勇氏2022.04.25(月)フードニュース

※本企画は「フードニュース4月号」でも掲載しています。

米菓危機に増産と主力ブランド強化で望む

―― 2022年3月期第3四半期の業績について教えていただけますか。
佐藤 グループ全体の売上高(2021年4月~12月)は625億3100万円と対前年同期比0.9%増でしたが、国内米菓事業は465億9900万円と同0.8%減となりました。亀田製菓単体の米菓事業は、原材料価格の高騰に伴う製品規格の変更・価格改定、生産における人手不足、また昨年の巣ごもり需要の反動等により減収となっております。
 個別商品では「つまみ種」や「無限エビ」などは、コロナ禍の影響が一巡した後も好調に推移し、依然として生産が追い付かないほどの受注をいただいています。
 一方、百貨店を中心に高価格帯の米菓を製造・販売する「とよす㈱」、お土産品を扱う「アジカル㈱」の2社は増収増益となりました。2020年はコロナ禍の影響で外出自粛や百貨店の休業等が続き売上が落ち込みましたが、昨年は客足が戻ってきたことにより、売上の回復に繋がりました。


――  国内米菓事業の重点施策を教えてください。
佐藤 今年度は企業体質をこれまで以上に強化する必要があると考えています。最も重要な課題として、人手不足への対応があります。現状、生産設備をフル稼働させ操業しており、今年度は設備増強を進めるとともに、パッキング等の一部工程を外注化するOEM生産を、これまで以上に広げていきたいと考えています。社員の働き方改革に直結する取り組みであり、急な需要にも柔軟に対応できる体制を構築していきます。


―― 原材料・エネルギー価格の高騰等への対応はいかがでしょうか。
佐藤 原材料・エネルギー価格に関しては、昨年6月に規格変更、10月末に価格改定を実施し、コスト削減等も進めてきましたが、値上げ分だけでは吸収しきれないレベルの高騰が続いています。
 米原料の価格は安定していますが、原価に占める割合はあまり高くなく、原材料ではパーム油、サラダ油等の値上がりの影響を大きく受けています。また包装フィルム価格、工場の電気代等も上昇しており、適正な利益を確保するための対応が急務です。


米菓市場の縮小に危機感
―― 米菓企業他社が供給停止された影響はいかかがでしょうか。
佐藤 当社を含め米菓業界全体で増産に努めていますが、すべてをカバーすることは難しい状況です。また、不足分を数だけで埋めても、各製品がその分売上を伸ばすことは、難しいのではないでしょうか。
 米菓の特徴として、特売商品の売上が全体の5割程度を占めていますが、現状、小売店様からの要請は定番が最優先となっております。この状況が続くと、特売の売上機会が減少し、全体の売上が落ちることも考えられます。
 既に米菓売場が縮小している店舗もあります。一度縮小した部分が元に戻らずに、市場の縮小に繋がる可能性もあり、強い危機感を感じています。
 このような状況を踏まえ、今年度は既存の主力ブランド商品の価値を高める施策をこれまで以上に強化し、供給面でも売れ筋商品の増産に最大限努めていくことが重要だと考えています。


若年層の新たなファン獲得へ

―― そのような厳しい状況の中、現在のヘビーユーザーに加えて、若年層の取り込みが重要となると思いますが、とのような施策を展開していかれますか。 
佐藤 重要となるのは、「商品開発」と「コミュニケーション」だと考えています。3月14日に新発売した「亀田の柿の種 超わさび」と、4月18日に新発売した「亀田の柿の種 超梅しそ」では人気YouTuberによるコラボ動画を配信していただきました。また2月には関西6府県で「もち米」と「ポテト」を使用した、ポテトスナック「亀田ポテト」を発売しました。
 このほか昨年は若手社員が中心となり、お客様とのコミュニケーションを通じて新商品を開発する取り組みとして、クラウドファンディングで「“砂糖ゼロ”ハッピーターン」が生み出されました。今後も「亀田の柿の種」、「ハッピーターン」ブランドを中心にプロモーション施策を進め、若年層の新たなファンを増やしていきたいと考えています。


クロスボーダー取引を拡大
―― 国内米菓事業とともに3本柱を形成する、海外事業、食品事業の現状を教えてください。
佐藤 海外事業のうち北米事業については、昨年好調だった反動と原材料、エネルギー価格の高騰の影響等で減収減益となりましたが、しっかりと黒字を確保することができました。
 米菓製造技術をベースとした「うす焼」タイプの製品等を製造・販売する、持分法適用関連会社である「TH FOODS社」は250億円程度の売上高があり、オーガニック、グルテンフリー、ヴィーガン等をコンセプトにした商品を製造・販売する完全子会社「Mary’s Gone Crackers社」と合わせると、300億円ほどの売上となります。北米マーケットは最も期待している市場であり、今後も注力していきます。 
 アジア市場も好調で、現地の市場開拓とともに、今年度はこれまで以上にクロスボーダー取引(国際間取引)を拡大させていきたいと考えています。 
 第3四半期決算で利益に大きく貢献したベトナムの「THIEN HA KAMEDA社」が発売する「ICHI」という揚げせんべいは、日本でそのまま販売しても受け入れてもらえるため、これを日本の流通関連会社様だけでなく、当社本体でも輸入して、我々のブランドとして販売できる可能性を探っています。
 このほか、豪州向けのOEM生産が中心のカンボジア「LYLY KAMEDA 社」も順調に売上を伸ばしています。こちらも豪州企業から新たなOEM製品を受注し、4月以降に本格的に生産を開始します。
 タイでは2020年に立ち上げたSingha Groupとの合弁会社「Singha Kameda 社」がスタートしたばかりですが、黒字化することができました。


―― 食品事業はいかがでしょうか。
佐藤 新機軸として今年3月に米粉パンの新ブランドとして「Happy Bakery」(㈱タイナイ)、またプラントベースドフードの新ブランド「JOY GREEN」(㈱マイセンファインフード)を立ち上げました。
「JOY GREEN」の大豆を原料としたベジミート(ミンチ)については、米菓の調味技術・ノウハウを活かし、大豆臭さが少なく肉の質感に近い商品を提供できています。今後も技術的な優位性を活かし、事業拡大を図っていきます。


―― 最後に中長期的な経営方針についてお聞かせください
佐藤 国内米菓事業はもちろん伸ばしていきますが、今後マーケットが大きく成長する可能性が高い海外事業、食品事業を積極的に拡大し、相対的に米菓事業の貢献度は落としていくことが、健全な経営に繋がると考えています。
 長期ビジョン「グローバル・フード・カンパニー」の実現に向け、カーボンニュートラル、環境といった視点も強く意識し、“Better For Youの食品業”へと進化するべく、取り組みを進めていきます。

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