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【2024年 新春トップインタビュー】江崎グリコ㈱ 代表取締役会長 江崎勝久 氏2024.01.26(金)フードニュース

※本企画は「フードニュース2024年新年特集号」にも掲載しています。

業績持ち直しも楽観視せず
顧客視点の新価値創造、次のステージへ

― アフターコロナの扉が開かれ、さまざまな変化が加速した2023年を、どのようにどう捉えていらっしゃいますか。
江崎 わが国経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限が緩和され、経済活動の正常化が進む一方で、エネルギー・原材料価格の高騰、急激な為替変動等の影響があり、世界的な金融引締めによる景気の下振れリスクが生じるなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。食品業界も例外ではなく、原材料価格や円安の動向が、なおも予断を許さない状況であります。
 このような状況の中で、当社グループは、存在意義(バーバス)である「すこやかな毎日、ゆたかな人生」の実現に向けて価値創造を強化し、中期経営計画に掲げる「おいしさと健康価値の提供」に注力しました。


― 貴社の2023年12月期第3四半期(1月~9月)は「増収・増益」で推移しています。今期ここまでの実績について、江崎会長はどのように評価されますか。
江崎 今期第3四半期までの実績は、売上高:2465億4100万円(対前年同期比9.1%増)、営業利益:159億1000万円(同30.7%増)となっております。ここまで、国内の各事業の売上高が前年を上回る状況だったことなどを踏まえ、通期の連結業績予想を上方修正いたしました。ただ、社内で設定した目標に達していないブランドや、地域ごとの増減もあります。もっと伸ばせるという期待感と、決して楽観はできないという緊張感の両方を感じております。

― ブランドごとの動向を伺いたいと思います。健康・食品事業の主力ブランドのひとつ「アーモンド効果」についてお聞かせください。
江崎 「アーモンド効果」はお客様の健康志向も高まりに合わせて、商品群を拡充しました。同ブランドの海外展開も進め、ASEAN地域で初めて、タイでECサイト、小売店それぞれの販売網を通じて発売しました。今後も先行して販売する中国と台湾とともに、現地市場での定着に向けて強化を図ります。
 日本にアーモンドの菓子を初めて導入したのは当社です。1930年に創業者の江崎利一が米国でアーモンドに出会い、1955年に「アーモンドグリコ」を発売してから、アーモンドに備わる健康価値を生かした商品を展開しておりますが、アーモンドの新たな食文化を創造して発信するため、2022年末に、直営の店舗「Glico ALMOND DAYS」を東京駅八重洲口地下に開業しました。2023年は「アーモンド効果<3種のナッツ 砂糖不使用」を発売し、「砂糖不使用」のラインアップを拡充しました。今後も国内外のお客様がアーモンドの栄養を習慣として摂ることにより、健康的な食生活を送ることに貢献してまいります。


― 健康・食品事業のアイスクリームの売上高は、176億1400万円(対前年同期比17.4%増)となりました。
江崎 2023年は猛暑といった天候要因の影響もあったでしょうか。「パピコ」「アイスの実」が前年を上回り、アイスクリームの売上を牽引してくれました。ただ、アイスクリームは秋冬の動向も重要です。12月に寒い時期に合わせた濃厚な味わいと食感を楽しむ「パピコ 濃密仕立てレーズン&バター」という新しい「パピコ」を発売し、冬期の需要喚起にも注力しています。


― 菓子の主力ブランドである「ポッキー」の動向はいかがでしょうか。
江崎 第3四半期までは前年同期を上回る売上で進捗していることに加え、大人が好むビターな味わいと、健康意識のニーズに応える「ポッキーカカオ60%」を9月に発売し、ブランド力を強化しています。
 また、グローバルブランドとしての「Pocky」は、インドネシアの新工場が出荷を開始し、米国への輸出も始めました。最新鋭の工場による生産で東南アジア市場、北米市場への供給を図り、「Pocky」のブランド力を強化してまいります。こうして生産能力が向上したことに伴い、東南アジア、北米における販売強化策にも注力する所存です。

― 中国、ASEAN、米国を中心に海外売上高比率19.8%(※)という高い水準にある貴社の海外事業ですが、今期の動向はいかがですか。
江崎 海外事業は今期第3四半期(1月~9月)で売上高:517億6100万円(対前年同期比21.9%増)、営業利益:35億0600万円(同339.1%増)と伸長しています。円安や中国のロックダウンの反動増など、外的要因もありますが、今後も「Pocky」「ビスコ」「アーモンド効果」といったグローバルに展開する主力ブランドを核に、中国、ASEAN、米国での事業を、国内事業とともに発展させていきたいと考えています。


― 「おいしさと健康」を価値として提供するための、研究開発分野での進捗をお聞かせください。
江崎 当社では腸内細菌が作る代謝物質「タンサ(短鎖)脂肪酸」の働きを広め、腸からの健康生活習慣についての研究・啓発活動を行う「タンサ脂肪酸プロジェクト」推進しており、当社独自のビフィズス菌「GCL2505株」の研究を進めております。このほど、ビフィズス菌「GCL2505株」と水溶性食物繊維イヌリンを摂取することによる、認知機能の改善効果と、腹部の内臓脂肪の低減効果をそれぞれ確認し、ともに国際科学雑誌「Nutrients」に掲載されました。今後もヨーグルトなどの乳製品を通じて、お客様の健康に貢献してまいります。


― 2022年にスタートした中期経営計画における、2023年の重点施策についてお聞かせください。
江崎 社内体制を見直し、各事業への注力を図るため、「カテゴリー制」から「事業部制」を導入いたしました。顧客視点で、生活者のニーズに合わせて提供すべき価値を見出すことに加え、原材料調達、商品の開発、マーケティング、セールスなどあらゆる部門が一体となって付加価値を生み、新たなバリューチェーンを創り出すことに努めます。


― 最後に今年の抱負をお聞かせください。
江崎 昨年からの物価高の影響が心配されますが、消費者の購買力は高いと捉えています。消費者が欲しいもの、必要とされるものを開発し提供することを今年も継続し、前進していきます。創業以来一世紀にわたり、独創的な商品づくりと市場の開拓に取り組んでまいりましたが、これからも、顧客視点で「おいしさと健康」の新たな価値を創出し、社会に役立つ存在であり続けるため、グループが一丸となり積極果敢に行動を起こしていく所存です。

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