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【2025年新春トップインタビュー】㈱ロッテ 代表取締役社長執行役員 中島英樹氏2025.01.27(月)フードニュース

※本企画は「フードニュース」2025年新年特集号にも掲載しています

共通価値の創造を通じて
「しあわせな未来」実現へギア上げる

―― まずは昨年の振り返りからお願いします。
中島 2024年は、社会活動が活発になる中、国内経済は緩やかな回復を見せ、企業業績も改善の動きが広がりました。しかし、長引く紛争や中国経済の停滞といった地政学的リスクは依然として高く、日米両国の首脳交代など先行きは決して平坦ではありません。給与水準の引き上げが進む中、物価高を乗り越えた消費の力強い回復に期待が寄せられています。

 このように変化の激しい環境下では、パーパス(存在意義)の重要性が一層増すと感じております。2023年に策定したパーパス「独創的なアイデアとこころ動かす体験で人と人をつなぎ、しあわせな未来をつくる。」に基づき、共通価値の創造(CSV)を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

―― 昨年の貴社の動向についてお聞かせください。
中島 2024年の市場全体を振り返りますと、先行きの不透明感からブランド回帰の姿勢や消費の二極化が見られる中、値上げに伴う平均単価の上昇や生活者の賃金上昇が市場成長の後押しとなり、堅調な動きが続きました。

 当社におきましては、主力ブランドの強化と高付加価値型のマーケティングに注力し、菓子事業・アイス事業ともに着実な成長を遂げました。国内菓子は、「ガーナ」と「チョコパイ」がプレミアム品質の新商品を中心に好調に推移し、「ZERO」もプロモーション強化による健康価値の浸透で伸長しました。ガムはオフィス回帰の流れから需要の回復が継続し、好調な販売となりました。

 国内アイスは、猛暑の影響に加えて価格改定後も数量を落とすことなく需要を継続し、市場全体が拡大しました。当社ブランドも好調に推移する中で、特に「クーリッシュ」が顧客接点の強化やチャネル戦略が奏功し、大きく伸長しました。

―― 新領域分野も好調ですね。
中島 「生チョコパイ」が通年販売による国内2品体制を整備したことに加えて、初の海外展開も実現しました。他にも「生雪見だいふく」などの新たな展開も好評をいただいており、新市場での可能性を広げています。

―― 海外事業の動向はいかがですか。
中島 東南アジアはインドネシアのハラル認証の「チョコパイ」が認知向上とともに成長を続け、シェアを拡大しています。ポーランドの「ウェデル」は、ワルシャワ市内の工場で体験型施設「チョコレートファクトリーミュージアム」をオープンし、「ウェデル」ブランドの魅力を伝えることで消費者との絆を強め、企業価値を高めています。

―― カカオの高騰に代表される、サプライチェーンのリスク管理が課題となる中、貴社の取り組みについてお聞かせください。
中島 サプライチェーンにおいては、グローバル視点で中長期の課題やリスクを洗い出し、全体最適による強靭化を進めています。

 昨年のカカオ豆の高騰は事業に大きな影響を及ぼしました。カカオ産業の持続可能性は重要な経営テーマであり、10月にガーナ共和国を訪問した際には、カカオ農家が抱える様々な課題を目の当たりにし、我々は生産地の課題に対して大きな責任があることを再認識しました。

 ロッテでは、トレーサビリティの確立や生産地が抱える課題の解決に向けた支援を継続しており、そのようにして調達したカカオ豆を「ロッテサステナブルカカオ」と名付け、2028年までに調達するすべてのカカオ豆で実現していく目標を掲げています。目標の達成に向けては、児童労働のモニタリングや収穫量増加のための農法指導などの施策に加えて、カカオ関連企業4社との共同で、カカオポッド由来バイオ炭の評価試験を開始しました。土壌改良によるカカオ農家の生産性向上や脱炭素効果を期待し、検証を進めています。

―― 今後の重点施策についてお聞かせください。
中島 2025年以降についても、CSVの実践を通じて人々のしあ
わせな未来へ貢献していくために、ブランドポートフォリオの再編と高付加価値型のマーケティングを進めてまいります。そのためには、既存事業の収益性向上と、事業領域の拡大をさらに推進し、持続的成長の基盤を一層盤石なものにいたします。また、心身の健康に寄り添う提案や、日々の楽しさと喜びを届ける取り組みについても継続していきます。海外ではブランド価値の向上と、顧客接点の拡大に取り組むことで、オーガニックでの成長力をさらに高めてまいります。

―― ESG中期目標も“進化”しました。
中島 昨年、ESG中期目標を事業環境の変化に合わせて見直しました。創業100周年を迎える2048年のありたい姿を3つのサステナビリティビジョンとして明文化し、その実現に向けてバックキャスティングで新たな目標である「ロッテ ミライチャレンジ2048」を策定しました。多様なステークホルダーの皆さまと協力しながら、パーパスで掲げる「しあわせな未来」の実現に向けて全力を尽くしてまいります。

―― 歯の健康維持への取り組みに、期待が高まっています。
中島 健康の増進を目指す「噛むこと」は、ガムによるオーラルフレイル予防に伴う介護費抑制効果を年間約52億円と推計しました。社会的価値をエビデンスと共に語る重要性が増す中、習慣化による社会的インパクトを可視化できたことは、咀嚼習慣の健康価値を対話していく上で非常に有効であると考えています。 

「キシリトール」については、世界中の人々の歯の健康維持への貢献を目指して、ボーダレスプロジェクト「Smart Habit」を開始しました。予防歯科先進国のフィンランドに倣い、キシリトールを生活に取り入れる習慣を啓発する取り組みで、まずは日本・韓国・ベトナムで始動します。

―― 環境面で注力されていることは?
中島 環境面では、サーキュラーエコノミーへの取り組みを拡大しています。石油由来の使い捨てプラスチックゼロを目指し、部門横断プロジェクトを立ち上げ容器包装のアップデートを進めています。食品ロスの削減では、トッポのプレッツェル製造中にカットした端の部分などを代替原料に醸造した発泡酒を開発し、一部販路で限定販売したところ大変好評をいただいています。

―― 人財活用・育成の重要性がさらに高まっています。
中島 これらの取り組みを実現するうえで原動力となるのは人財です。多様な視点を活かすDEIの推進や、自発的な挑戦を奨励する社内公募制、デジタル・AIの実装など、新たな価値を創造するための仕組みづくりを進めています。一人ひとりが個性や能力を最大限に発揮し、挑戦と成長を楽しみながら充実して働ける環境を築いてまいります。
   
 社会や環境も含めた全てのステークホルダーのしあわせな未来の実現を目指し、当社は様々な取り組みを通じて本年も成長を続けてまいります。最後に、皆さまのさらなるご発展を心より祈念いたしております。

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