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【2025年新春トップインタビュー】㈱不二家 代表取締役社長 河村宣行 氏2025.01.27(月)フードニュース

※本企画は「フードニュース2025年新年特集号」にも掲載しています。

主力大袋商品好調。価値訴求し需要喚起

利益回復も途上、2025年さらなる飛躍を

―― 貴社の2024年12月期の第3四半期決算(1月1日~9月30日)の実績と、2024年の振り返りをお聞かせください。

河村 第3四半期の売上高は、774億1400万円(対前年同期比102.9%)と前年実績を上回り、利益面についても、営業利益が7億7400万円(黒字転換)、経常利益16億3000万円(同310.8%)、四半期純利益6億6800万円(黒字転換)、と大きく回復しました。                        

 製菓事業では、原材料・物流費等の上昇や、節約志向の高まりなど、厳しい環境が続く中、主力ブランドの大袋商品が好調に推移するとともに、当社の技術力を活用した新機軸の商品を展開しました。また、洋菓子事業では冷凍スイーツ自販機や新業態となるドーナツ専門店をオープンするなど、新規顧客の獲得を図りました。

 一方、海外事業では、連結子会社「不二家(杭州)食品有限公司」の売上が、中国国内の景気減速などの影響を大きく受け、計画を下回り、課題も残っています。同社では11月から新たにグミ製造を開始し、売上確保に努めていきます。

―― 製菓事業が好調な要因をお聞かせください。

河村 「ホームパイ」「カントリーマアム」ブランドの大袋商品が売上を牽引しました。物価高が進行する中、「ホームパイ」は、値ごろ感に加え、ロングセラー商品が有する味わいや品質への安心感・信頼感に価値を感じていただき、大きく売上が伸長しています。「カントリーマアム」は2023年上期、価格改定の影響で苦戦しましたが徐々に回復し、2024年に入ってからも増量品の拡販等に注力したことで、売上を伸ばしています。

 主力商品の「18枚 カントリーマアム(バニラ&ココア)」「38枚ホームパイ」に、「163gカントリーマアムクリスピー(バニラ&ショコラ)」を加えた3商品は、異なる食感と味わいを楽しめるとともに、それぞれのパッケージカラーが赤色・黄色・青色の3色となっていることから、ビスケット・パイ売場に彩りを与え、アイキャッチ効果が高まることも訴求し、3商品とも導入していただく小売店様も増加しました。

 2025年は「ホームパイ」ブランドから、姉妹品となる大袋の新商品を発売する予定としており、2ブランド・4商品の“ダブルツートップ”体制でさらなる売上拡大を目指していきます。

―― 好調な大袋商品に加え、7月には「カントリーマアム」の技術力を活かした食物繊維入りソフトクッキー「モーニングマアム」(バニラ/いちご/抹茶)を発売されましたね。

河村 これまでも「カントリーマアム」を朝食として喫食いただいている方々がいらっしゃることから、より朝食需要を掘り起こすことを目的に発売しました。「カントリーマアム」のブランド力や、朝の忙しい時間に気軽に喫食できること、また、お子さまに少しでも朝食を食べて欲しいといった主婦層の方々のニーズにも応えることができ、好調に推移しています。

 小袋タイプ(内容量50g)であることから、CVSでの導入とともに、SM等での売場開拓につながる商品として、今後も期待しています。

―― このほか「ハートチョコレート」「ルック」ブランドなどの動向はいかがでしょうか。

河村 1935年に発売を開始した「ハートチョコレート」ブランドでは、姉妹商品の発売やプロゴルファーの菅沼菜々選手を起用したTV-CMのプロモーション効果により、伸長傾向が継続しています。「ルック」ブランドでは9月に定番3商品をリニューアルするとともに、プレミアムラインとして、贅沢感のある2商品を新発売し、好調に推移しています。

 また、9月にはしっとりと濃厚な味わいが楽しめる焼菓子の新ブラント「スーパーハイウェイ」から、半生タイプの「銀座窯出し」シリーズ3商品(チーズケーキ/ブラウニー/フィナンシェ)を発売しました。半生菓子の需要を捉え、市場の活性化に寄与することを期待しています。

―― 洋菓子事業でも積極的に新施策を展開されていますね。

河村 不二家洋菓子店において、「プレミアム製品」や「厳選素材製品」などの販売に注力しました。また、新VI(ビジュアルアイデンティティ)(※)に基づく、店舗改装などを推進しており、  新ロゴマーク「スマイルマーク」をパッケージにデザインしたバウムクーヘンをはじめとした焼菓子商品も、非常に好調に推移しています。

 若い世代のお客様の来店も増加し、既存店の売上は堅調に推移していますが、一方で、FC加盟者様の高齢化・後継者不足などにより、店舗数は減少傾向にあります。

 そうした中、2023年から、店舗以外でも不二家の洋菓子を楽しんでいただけるよう、冷凍スイーツ自動販売機「FUJIYA CAKE’s STAND」の設置を積極的に行っています。

 関東地域を中心に、不二家洋菓子店や不二家レストランの店舗とともに、学校や工場、駅施設などへの導入も進み、2024年9月末時点で設置数は240台となっています。今後、全国各地で配送ルートの構築などを進め、導入拡大を目指していきます。

 また、9月に新業態となるドーナツ専門店「ペコちゃんmilkyドーナツ ビナウォーク海老名店」をオープンしました。「ミルキー」の優しいミルクの風味をイメージしたドーナツを販売しており、好評を得ています。

※ 2023年9月にデザインリニューアル。人気キャラクター「ペコちゃん」のペロッと出した舌をモチーフにした新ロゴマーク「スマイルマーク」は、(公財)日本デザイン振興会が主催する「2024年度グッドデザイン賞」を受賞し、「グッドデザイン・ベスト100」に選出された

―― 海外事業では、中国での巻き返しとともに、ベトナムや北米での取り組みが注目されます。

河村 ベトナムでは、2022 年に丸紅㈱との合弁会社「FUJIYA VIETNAM CO.,LTD.」を設立し、「カントリーマアム」を中心に輸入販売を行い、現地での受容性の検証や、販売モデルの確立に向けた取り組みを進めてきました。

 売上は好調に推移しており、施策の進捗状況も踏まえ、2024年10月、現地に「カントリーマアム」などを製造する新工場の建設に着手し、2025年末頃から現地生産をスタートする予定です。同工場はハラル対応となっており、ベトナムとともに、インドネシアなど東南アジア地域での事業拡大も視野に入れています。

 北米市場では新たな展開として、2025年2月頃から、冷凍スイーツ自動販売機で発売している製品の技術を生かした冷凍ケーキの輸出をスタートする予定です。

―― 今年の展望をお聞かせください。

河村 製菓事業では引き続き、原材料等のコストアップに対応しつつ、主力商品を軸に、ブランドの強化・横展開を図りつつ、ロングセラー商品、新機軸の商品、プレミアム感のある商品など、それぞれの価値を訴求し、需要を喚起する施策を推進します。洋菓子事業では、2025年に黒字化を達成することを第一に取り組んでいきます。

 当社会長の山田憲典は、2024年の年頭の書初めで「飛躍」と書きました。1年間、2023年度決算からのV字回復に向けて取り組んでまいりましたが、まだ途上にあると感じています。2025年は新施策を打ち出しながら、「さらなる飛躍」を目指し、邁進してまいります。

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