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『フードニュース』が選ぶ 菓子業界「2024年トレンドTOP10」発表!2024.12.25(水)フードニュース

 1月1日の「能登半島地震」で幕を開けた2024年。“カカオショック”、“相次ぐ値上げ”、“物流の2024年問題”など、菓子業界としてもさまざまな課題対応に追われた1年となった。
 弊誌編集部では初の試みとして、2024年・菓子業界の動向、各社の取り組み、社会・経済動向などのなかから、「2024年トレンドTOP10」を選定。順位付けは行わず、10の重要なトレンドとして紹介する。菓子業界の現状を把握し、来年以降の成長につなげるヒントとして、活用されることを願う。

●“ カカオショック”。メーカー対応奔走
 今年4月には史上最高値となる1万ポンド超えを記録したカカオ価格は、夏場にはやや落ち着きを見せたものの、ここに来て、再び最高値圏に突入しそうな動きを見せている。さらに供給不足も深刻で、チョコレートメーカー各社は対応に奔走する1年となった。
 各社とも価格改定に加え、カカオ使用量を減らした商品の投入、カカオ原料の植物油脂への代替などの対応策を実施。価格改定による売上増はあっても経営面での打撃は大きく、また、市場ではチョコレート売場の縮小も散見され、チョコレートの価値訴求で乗り切りたいところだ。

●錠菓市場の力強い回復
 コロナ禍後の人流回復をバネに、大きな成長を見せているのが錠菓だ。
 アサヒグループ食品の「ミンティア」は今年1-8月の累計販売金額が対前年比126%(2023年通期は同123%)と2年連続で大躍進を遂げた。“エチケット”“気分転換”“眠気覚まし”といった基本ニーズへの対応強化施策が奏功した。8月以降も好調を継続しており、2025年でのさらなる飛躍にも期待が持てる。
 また、人流回復を背景としたガムの回復傾向にも力強さが見えた。ロッテの「キシリトール」「ロッテイタガム」など主力商品の好調を、2025年につなげたい。

●「令和6年能登半島地震」 菓子業界支援対応、備蓄重要高まる
 1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」に際し、菓子メーカー各社は自社製品の寄贈や売上金の一部の寄付などを通じて、迅速かつ継続した支援を行った。
 また、災害に備える備蓄の重要性が改めて見直され、消費期限の長い菓子の備蓄需要が高まり、売上を大きく伸ばした商品もあった。最近では災害時の心のケアの観点から、非常食=日常食とする考え方が浸透し続けており、ローリングストックの啓蒙と合わせ、ニーズに合った商品の導入拡大に期待が集まる。

●「物流の2024年問題」。製・配・販での取り組み加速
 今年4月からトラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されている。
 これによって発生する物流の諸問題の解決に向け、様々な施策が実施された。「共同配送」「モーダルシフトの推進」「パレット対応」「検品レス」「配送センターの拡充」「デジタル活用による物流効率化」「AIによる需要予測」など、製・配・販での取り組みは加速しており、物流の効率化の進化により、菓子業界のさらなる発展につなげたいことろだ。

●値頃感↔贅沢感。“消費の2極化”
 相次ぐ値上げによる消費の疲弊感を背景に、低価格帯菓子、コスパよしの大袋商品が健闘した。一方で、“自分へのご褒美”、“ときには贅沢”の需要も拡大し、チョコレート、ポテトチップスなどの高付加価値(高価格帯)商品も存在感を示した。
 値頃感商品としては、PB、留型商品への消費者の支持が年々拡大しており、NB商品との競合(場合によっては共存、共栄)など、メーカーにとっては対応の難しさが増していくことになるだろう。

●成長止まらぬグミ市場
 2023年のグミの販売金額は972億円と、今年には1000億円の大台突破が確実視されるなか、1~6月期の販売金額は554億円(対前年同期比113.0%)と破竹の勢いは継続中(※1)。ハード系グミの伸長が目立ち、新たなファン層拡大にもつながっている。
 各社の主力品に加え、多彩な商品がひしめき合う激戦区にも関わらず、新商品も好調という点にグミ伸長の底力が見える。グミと歩調を合わせ、のど飴が牽引したキャンディ市場も拡大中。

●スナック市場絶好調
 2023年のスナックの販売金額は3990億円と、今年にはチョコレート(4143億円)を抜き去り、菓子No.1カテゴリーとして君臨する可能性もある(※1)。
 主要スナックメーカーの今期中間決算でもポジティブ要素が目立ち、高付加価値路線による、スナックの価値向上と新たな購買層獲得に加え、直営店やギフト商品によるタッチポイントの拡大でも着実な成果を上げている。果たして首位交代はあるのか。

●“令和の米騒動”米菓にも影落とす
 今夏、スーパーの棚から米が消えた“令和の米騒動”。原料米においても昨年来、価格の高騰や供給不足が深刻化している。今年10月の段階での相対取引価格も対前年比151%と高騰しており(※2)、米菓メーカーにおいては、新たな価格・規格改定など、今後も難しい舵取りを求められそうだ。
 特売商品による購入頻度の増加と、定番商品による米菓価値の向上の両輪を回しながら、グルテンフリーなどの健康価値とあわせ、訴求力を高めていきたい。

●朝食需要、時短…食事の菓子代替加速
 「ランチパイ」(湖池屋、3月)、「モーニングマアム」(不二家、7月)の発売が象徴するように、食事の菓子代替を狙う取り組みが加速している。
 食生活の価値観変化や、日常生活の時短の必要性が背景となり、子育て世代を中心に需要の拡大が期待できる。市場としてはこれからで、牽引する商品も育成中という段階ではあるが、喫食機会の増加が至上命題の菓子業界にとって、新たな鉱脈となる可能性に満ちている。

●eコマース、直営店、クラファンなど、新チャネル展開活況呈す
 大人気の「グミッツェル」を求めて全国から多くのファンが集まる「ヒトツブカンロ原宿店」(4月オープン)。他の直営店や「Kanro POCKeT」のオンラインショップも活況を呈しており、同社の価値訴求の場として機能している。
 また、湖池屋やロッテなどでは自社ECサイトでの高付加価値、オンライン限定商品に注力しているほか、クラファンのテスト販売を経て、全国発売へと発展した三幸製菓の「もちきゅあ」も注目を集めた。

 2024年のトレンドから2025年を展望すると、コロナ禍から足踏みが続いた「イノベーティブな新商品の開発」に各社注力することを期待したい。消費者の価値感が変貌するなか、新時代の菓子の真価を発揮する機は熟している。

※1 インテージSRI+データ ※2 令和6年産米の相対取引価格・数量(令和6年10月)(速報)

#お菓子トレンド #お菓子トップ10

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