【2025年新春トップインタビュー】㈱ブルボン 代表取締役社長 吉田 康氏2025.01.27(月)フードニュース
※本企画は「フードニュース」2025年新年特集号にも掲載しています
1000年続く企業へ、社会貢献し成長・発展
今年度上期業績好調、ブランド強化策奏功

―― 貴社は2024年11月に創立100周年を迎えられました。振り返りと今後の方針をお聞かせください。
吉田 当社は1923 年に発生した「関東大震災」により、地方への菓子供給が途絶えたことを受け、柏崎で和菓子屋を営んでいた吉田吉造が「地方で量産工場による菓子製造を行う」ことを決意し、翌1924年に「北日本製菓」を設立しました。
栄養価が高く保存ができるビスケットの製造からスタートし、1989 年には社名を「ブルボン」に変更。多岐に渡る菓子商品に加え、ミネラルウォーターや機能性食品、チルド商品、冷菓など多様なカテゴリーの商品を展開し、「心と体の健康づくり」に貢献する健康増進総合支援企業を目指し、種々の活動に取り組んでいます。
2024年は、年明け早々の1月1日に「令和6年能登半島地震」が発生し、当社では被災地の早期の復旧・復興を願うとともに、クッキーやミネラルウォーター、マスクなどの支援物資の提供、また、義援金の寄付等を行わせていただきました。そうした中、同地震は「4000年に一度のレベル」であるとの学者の見解もあり、超長期的な視点を持つことの重要性を改めて認識しています。
今後の経営にあたっても、次の100年、そして1000年続く企業集団であるため、自然災害への危機意識を持ち続けるとともに、気候変動に伴う環境変化への対応、サステナブルな社会の実現に向けた取り組み、地域社会の維持・活性化への貢献、原材料の確保やサプライチェーンに大きな影響を与える地経学(※1)的な観点も含め、超長期的な視点で、社会課題に向き合っていく必要があると考えています。
そして、当社の経営理念である「利害相反する人を含めて、集団の生存性を高める」を体現するべく、七媒体(※2)の皆様とのコミュニケーションを大切にし、社業の発展、社会への貢献を目指して事業を展開していく所存です。
※1 地理的な条件を軸に、国家間の関係性や国家戦略などを分析する「地政学」に、経済の視点を組み合わせたもの
※2 ブルボンでは、ステークホルダーを七媒体(消費者、流通、国・県・市町村、株主、金融機関、取引先、従業員)と定め、七媒体と目指すべき超長期目標として、「地球との共存」「社会貢献」「永続性」を掲げている
増収・増益、菓子カテゴリー好調
―― 2025年3月期第2四半期(4月~9月)の実績、動向についてお聞かせください。
吉田 多様化する消費スタイルに対応するべく、おいしさと付加価値を提供する商品等を展開し、第2四半期の連結業績は、売上高512億8100万円(対前年同期比111.1%)、営業利益20億6000万円(同637.7%)、中間純利益17億2100万円(同375.3%)と増収・増益で着地しています。
このうち菓子カテゴリーでは、発売50周年を迎えた「ルマンド」ブランドでプロモーションを行い、活性化を図るとともに、ルマンドの製造技法を用いた新商品「ラングレイス」が好調に推移し、売上を牽引しました。
また、「プチ」シリーズも引き続き好調で、チョコレート、グミカテゴリーでも新商品の発売やブランド力を強化する施策を展開し、菓子カテゴリーの売上高は491億6300万円(同111.4%)と大きく伸長しました。
利益面については、過去から継承してきた取引制度や商慣習の見直しのほか、価格改定を含め生産性向上に努め、収益性が改善したことが増益に寄与しています。
話題の「ラングレイス」起爆剤に
―― 「ラングレイス」の発売は、SNS等で大きな話題となりましたね。
吉田 ラングドシャ生地を折り重ねチョコレートクリームでコーティングした「ラングレイス」は、クレープ生地の「ルマンド」とは異なる食感と味わいが楽しめ、好評をいただいております。こうした商品が起爆剤となり、「ルマンド」ブランドをはじめとしたオリジナルビスケット商品群、ひいては、ビスケットカテゴリーが一層活性化していくことを期待しています。
今後も「ラングレイス」や、「贅沢ルマンド」を含めた「ルマンド」ブランド群の独自性の高さを価値として訴求し、ブランド力を強化していきます。
―― ブランド群を確立して売上伸長につなげる取り組みとしては、「アルフォート」ブランドの戦略が奏功しているようですね。
吉田 「アルフォート」ブランドは当社のトップブランドとして、2024年も売上は順調に推移しています。チョコレートとビスケットの組合せが魅力の「アルフォート」シリーズはビスケットカテゴリーの商品ですが、「アルフォートミニチョコレート」シリーズはチョコレートカテゴリーの商品となっており、カテゴリーの枠を超えたブランド展開が強みとなっています。
また、「アルフォート」ブランドはインバウンド需要を捉えており、国際的にも競争力を有する商品であると考えています。国内空港やディスカウントストアなどで、外国人観光客への訴求を強め、輸出拡大、新興国の開拓へとつなげていく所存です。
―― 「プチ」シリーズの動向はいかがでしょうか。
吉田 全24種類を展開している「プチ」シリーズは、チョコレート・ビスケット・米菓・スナックと菓子の主要カテゴリーを網羅し、選択肢が豊富であることや、お求めやすい価格帯であることが評価され、順調に売上を伸ばしています。
新商品の発売とともに、アイキャッチ効果を高める「プチシリーズコーナー」の什器販促物を用意するなど、積極的な店頭展開を進めています。
通常の菓子売場にプラスする形で専用のコーナー等を設けていただくなど、全24種類を取り扱っていただく小売店様も増えてまいりました。新たな菓子売場の創出にも貢献できる同シリーズの展開に今後も注力していきます。
新商品開発、菓子市場活性化へ
―― 2025年の菓子業界の動向予測をお聞かせください。
吉田 菓子市場はコロナ禍以降、堅調に推移していますが、各社ともに原材料の不足や価格高騰、エネルギーコスト上昇への対応が求められ、生産性向上や価格改定・規格変更等が業務の中心となり、新しいものを開発する余力は少なかったのではないでしょうか。2025年はこうした取り組みを経て、新商品開発に注力する企業が増え、業界全体に活気が生まれることを望みます。
当社では2024年秋冬シーズン、菓子分野において、「ラングレイス」をはじめ、贅沢感、健康志向、新規性を訴求できる商品を数多く発売しています。2025年も付加価値の高い新商品の投入や、主力ブランドの強化につながる施策を実施し、売上の伸長とともに、話題喚起を図り、菓子市場全体の活性化に寄与していきたいと考えています。
このほか、物流課題へ対応するため、鉄道輸送(モーダルシフト)や、菓子メーカー様との共同輸送など輸送効率化に向けた取り組みを推進していきます。
―― 最後に今後の展望についてお聞かせください。
吉田 激甚化する自然災害や、人口構造の変化への対応等が求められる中、創業の地・柏崎に根付いて事業を継続し、地域とともに成長し、グローバルに展開する企業でありたいと考えています。
新潟県の中でも柏崎は「地方の地方」と位置付けられます。当社が最も大切にしていることとして「社会への貢献」があり、その一つには雇用を維持するといったことが含まれています。地域での雇用をいかにサステナブルなものにするかということは、当社の重要な使命であると考えています。
今後も社会に役立つため、挑戦し続ける企業であり続けます。