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【新春トップインタビュー】 ㈱ブルボン 代表取締役社長 吉田匡慶 氏2026.01.26(月)フードニュース

※本企画は「フードニュース2026年新年号」に掲載しています。

流通の課題把握と消費者との接点強化
菓子の可能性追求し、変化へ踏み出す

新潟県柏崎市出身。1981年生、明治大経営学部卒。日本アジア投資、北海道銀行を経て2014年ブルボン入社。製造管理、広告・デザイン、デジタル、経営企画部門を経て、2022年取締役就任。2025年6月代表取締役社長就任。妻、長男、次男の4人家族、趣味は旅行、サッカー

新社長としての第一歩は、卸業・小売業へのヒアリングから

―― 新社長就任後、半年が過ぎようとしていますが、重点的に取り組んだことをお聞かせください。

吉田 私は金融機関を経てブルボンに入社後、約10年に渡って製造部門、広告・デザイン部門、デジタル、経営企画部門を歩んできました。卸業・小売業の皆様と直接お話をする機会がほとんどなかったため、社長就任後から、北海道から沖縄まで、全国の卸業・小売業様へ足を運び、皆様が抱えている課題と、その解決に向けた当社への要望についてお話を伺ってきました。

 多くのご期待・ご要望をいただき、変化の必要性を実感した次第です。開発、生産から、販売まで、私たちは次に何をすべきかを社内で議論し、新しい方向性を見出す取り組みに着手しました。

―― そうした全国行脚の中で、どんなことが印象に残りましたか。

吉田 コストアップが加速する状況下において、価格での競争ではなく、価値や差別化の競争を望む声を数多く耳にしました。当社に対しては独自の新商品はもとより、卸業・小売業様とともに取り組む商品開発への期待が高まっていると感じました。

 当社はビスケット、チョコレート、グミ、スナック、米菓など多彩なカテゴリー展開が強みであり、今後は地域の特徴を活かした商品開発を、卸業・小売業様と一緒に手掛けることで、当社としての成長戦略につなげていきたいと考えています。

―― 増収・増益で着地した2025年3月期決算を受け、2026年3月期第2四半期の動向はいかがでしょうか。

吉田 現状では増収・減益で推移しており、通期でも同様の見通しです。増収・増益で着地した24年3月期、25年3月期においては、販売のウエイトを特売から価値に見合った価格改定を伴うレギュラー重視へと転換し、奏功しました。

 一方、 26年3月期上半期は売上高はほぼ計画通りといえますが、夏場の猛暑の影響を受け、チョコレート、グミといったカテゴリーでの伸びがもう一つだったかなという印象でしたが、ビスケットが大きく伸長し、全体をカバーしました。

 コスト面では、カカオ原料価格に落ち着きが見られるものの、高騰の余波が残っており、製造原価上昇の流れはもうしばらく続くと予測しています。

 今後は、小麦価格が安定傾向にあることから、相対的に価格優位性のあるビスケットに注力し、チョコ代替需要、食事代替需要といったライフスタイルの変化を捉え、売上と利益の拡大につなげていく方針です。

―― ライフスタイルの変化としては、消費者の節約志向がさらに高まってきましたが、どのように受け止めていますか。

吉田 直近のエンゲル係数の上昇と菓子への支出割合を分析すると、限られた支出の中でのコントロールが、お客様の中に広がっているのを感じます。賃上げがあっても、余裕のある状況とはいえません。

 当社では大容量の商品群に強みがあり、消費の2極化が進む現状では、その強みを発揮する好機と捉えています。さらに、地域の特産品を使った商品など、付加価値を加えた商品開発で贅沢需要・ご褒美需要にも応えていきます。

―― カテゴリーごとの強化策はいかがでしょうか。

吉田 まず、当社が一定のシェアを有するビスケットカテゴリーでは、相対的な割安感や食事代替需要を背景に拡大の可能性がある中、チョコがけ、クリームがけといった加工度の高い商品を強化していきます。

 チョコレートについてはカカオ原料の相場価格によって、今後のトレンドが変わる可能性もあり、その中でビスケットからチョコレートへの消費の転換が起こるかもしれません。当社では「アルフォートミニチョコレート」や「ひとくちルマンド」「ひとくちラングレイス」「サクつぶビット」など、「ビス×チョコ」のカテゴリー横断的ブランドの強みを活かし、市場の変化にも適切に対応していきます。

―― グミ市場での競争がさらに激しくなってきましたね。

吉田 グミにおいては今後も売場の拡大は続くと見ていますが、参入するメーカーも増加しており、楽しさと目新しさの提供が重要になっています。「フェットチーネグミ」と「しゃりもにグミ」といった主力ブランドに重心を置きながら、守りから攻めに転じる商品開発も視野に入れています。各地域とタッグを組んだフレーバー展開や、割安感のある商品としての打ち出しを強め、購入頻度を高めていきたいと考えています。

―― 「プチシリーズ」はいかがですか。

吉田 お求めやすい価格と、多彩なカテゴリーでの“常時24種類”展開で、「もう1品買える」商品として支持を得ております。売場でも配荷が広がっていますので、見せ方や商品の入れ替えなどで訴求力を高めてまいります。

―― 今後育成に注力したいカテゴリーを教えてください。

吉田 当社は創業以来、ビスケットと米菓の2本柱で成長してきた会社で、米菓は非常の思い入れのあるカテゴリーです。「チーズおかき」「羽衣あられ」などロングセラー商品に加え、昨年は「コメノチップス」という新食感のライススナックにも挑戦するなど、米菓の再成長に向けて取り組みを強化していく考えです。

―― 貴社では自社ECチャネル、自動販売機「PETIT MALL(プチモール)」、コンセプトショップ「Un BOURBON」など、販路の拡大を推進していますが、その狙いをお聞かせください。

吉田 最近ではSNSをはじめとするツールを活用して、お客様のご評価を収集することができますが、メーカーとして直接的に触れ合う機会が少ないのが現状です。EC、自販機、直営店舗は直接的なタッチポイントとして貴重であり、お客様からいただいたご意見・ご評価を、これからの商品開発に活かすという狙いがあります。

 また、昨年の3月には「だがしの日」のイベント、9月には「ブルボンメタバース」の技術を活かしたバーチャル工場見学を地元・柏崎で実施したほか、12月には子ども向け仕事体験テーマパーク「カンドゥー大日」(大阪府守口市)に出展し、子どもたちに直接アプローチする貴重な機会をつくることができました。

 私も柏崎市の小学校でバーチャル工場見学の模様を見せてもらいましたが、約2時間、子どもたちが楽しく体験している様子を見て、柏崎市にあるブルボンという会社と作っている商品を子どもたちに知ってもらえましたし、当社からも貴重な体験を提供できたと思います。

 そして、「だがしの日」のイベントでは「プチシリーズ」に子どもたちを笑顔にする力があることを再認識しましたし、何より参加した社員が元気をもらっている姿を見ることができたなど、有意義なことばかりでした。こうした機会を通じ、未来のお客様である子どもたちをロイヤルユーザーと捉え、ともに成長していきたいと思います。

―― 物流の課題解決に向けても、さまざまな手を打っていますね。

吉田 物流問題は当社にとって、常に経営問題です。工場が日本海側に集中しており、物流の効率化とコスト削減の可否が、商品価格に直結します。なかでもドライバー不足はサプライチェーンの持続可能性を高める上で大きな課題という認識を持っています。当社では昨年7月より新潟県内の菓子メーカー様、物流業者様と協業してトラックのダブル連結輸送がスタートしたほか、トラック予約受付サービスを全15拠点に導入し、物流DXも推進しています。このほかモーダルシフトの取り組みとして、「プチクマコンテナ」が活躍する鉄道に加え、フェリーの活用も進めています。

 また、生産の在り方そのものを見直し、需要の予測、生産・物流計画の最適化を、喫緊の課題として捉えています。当社では担当部署を中心に、新しい取り組みに着手していますが、今後は地域や同業の企業様、卸業・小売業様とも連携を深め、菓子・食品業界全体の課題として取り組む必要があるのではないでしょうか。

―― ベトナムでのカカオ豆の調達というニュースも飛び込んできました。

吉田 カカオ原料価格の高騰により、ここ数年は調達に苦労したことから、調達先の多様化が必要でした。メーカーとして責任のある生産に役割を果たすべく、同国・ザライ省の現地企業と覚書を締結し、ベトナム産カカオ豆を使用した菓子製造を進め、現地におけるカカオ栽培面積の拡大や生産性向上を目指します。

―― 菓子市場の現状分析と貴社の成長戦略をお聞かせください。

吉田 人口減によるマーケットの縮小が間違いなく進む一方、菓子においては、食事代替やご褒美、またコミュニケーションツールとしての用途が広がっており、市場そのものはまだまだ伸びる余地があると考えています。

 とはいえ、同じものをずっと販売していればいいということではなく、お客様のライフスタイルや社会状況の変化に即した新しい価値を提供していくことが重要です。菓子業界は平和産業であり、人を笑顔にするものです。お客様の要望は非常に細かくなっていますが、当社は多彩なカテゴリーを有しており、ある部門が多少伸び悩んでも、他を伸ばすことでカテゴリーのバランスを取りながら、成長を継続してまいります。

 課題としては海外比率の向上です。今後は中国、アメリカ、ベトナムの3カ国を起点にしっかりとした足場をつくり、海外事業の拡大につなげる方針です。 

 また、生産部門での人手不足も深刻です。新潟県を中心とした生産体制を敷く中で、人数をベースにした採用計画に限界を感じており、今後は生産現場の無人化・省力化をさらに推進し、人に頼らない生産体制の構築が急務です。

 人財面では今後の事業拡大を担う、経営人財の育成に計画的に取り組んでまいります。

―― 最後に吉田社長が今年の展望を漢字一文字で表すとしたら、どんな字になりますか。その言葉に込める想いをお聞かせください。

吉田 変化の「変」です。一昨年創立100周年を迎え、今年は102年目となりますが、当社内の会議や研修では「ブルボンは今、過渡期であり変革期である」という話をしています。会社を次の100年、1000年とさらに成長させるために、人口減など社会の前提が変化する中で、我々も変わる。2026年は少しずつでも変化が始まる年でありたいと考えています。未来に向けた第一歩を踏み出していきたいと思います。

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