【新春トップインタビュー】 ㈱ロッテ 代表取締役社長執行役員 中島英樹 氏2026.01.26(月)フードニュース
※本企画は「フードニュース2026年新年号」にも掲載しています。
サステナビリティ推進し、人財に活力を
共通価値の創造、変化を糧に進化継続

高付加価値型マーケティングと主力ブランド強化が奏功
―― まずは昨年の振り返りからお願いします。
中島 昨年は、日本初の女性の内閣総理大臣が誕生し、新たな歴史の節目となる一年でした。その一方で、米国の関税政策の転換や国際情勢の緊迫化など地政学リスクはさらに高まり、先行きの不透明感が一段と増した年でもありました。
企業を取り巻く環境は、これまで以上のスピードで変わり続けています。将来を正確に見通すことが難しい時代だからこそ状況を的確に把握し、機会を捉えて価値創造に取り組むことが重要です。そのような中にあっても、私たちは挑戦する姿勢を大切にし、変化を成長の糧として進化し続ける企業でありたいと考えています。
当社は、パーパス「独創的なアイデアとこころ動かす体験で人と人をつなぎ、しあわせな未来をつくる。」のもと、共通価値の創造(CSV)を通じて持続可能な社会の実現に貢献し、しあわせな未来を築いてまいります。
―― 菓子を取り巻く消費動向の分析と、貴社のブランド施策をお聞かせください。
中島 2025年を振り返ると、物価上昇を背景とした節約志向が高まる一方で、高付加価値・高単価な製品を選択する動きが広がり、消費の二極化が進みました。安心を求めて信頼できるブランドへ回帰する動きも見られます。生活者の価値観は大きく変化しており、多様なニーズに応える提案がこれまで以上に求められています。
当社においては、高付加価値型のマーケティングと主力ブランドの強化に注力し、菓子・アイスともに好調な販売となりました。
「ガーナチョコレート」はコストパフォーマンスの高い板タイプが需要を伸ばす一方で、専門店クオリティを追求した「プレミアムガーナ」シリーズが大きく成長しました。
「キシリトール」はブランド価値を再定義し、「歯と歯ぐきを手軽にケアできるオーラルケア製品」としてコミュニケーションを強化しています。中でも、歯ぐきを健康に保つ「キシリトール オーラテクト」は認知率の上昇とともに販売を拡大しました。
アイスは夏の猛暑が常態化するなか、「クーリッシュ」がパウチ形態の利便性とSNS等による接点強化の取り組みにより伸長しました。
海外では、インドネシアでハラル認証「チョコパイ」の新工場を稼働しました。これまで生産能力の制約から十分な供給が図れませんでしたが、今回の能力強化を機にインドネシア全域への展開を目指します。
2026年以降も、人々の期待に応える価値創造に取り組み、心身の健康と笑顔をお届けする活動を進めてまいります。
力を最大限に発揮できる社内環境へ。「しあわせな未来」への挑戦加速
―― こうした着実な歩みが続くなか、中長期的な展望はいかがでしょうか。
中島 中長期の成長を見据えるうえでは、バリューチェーン全体の課題に向き合いながら、事業基盤をより強固にし、確かな成長を描いていくことが求められます。
近年のカカオ豆の不作と高騰は一過性のものではなく、複合的な要因が絡み合う構造的な課題です。不確実性が高まる時代においては、有事へのレジリエンスという観点からもサステナビリティの活動が重要となります。
―― 具体的にはどのような取り組みをされていますか。
中島 私たちは、児童労働の撤廃や森林減少の防止に加えて、カカオ農家の生産性を高める農業指導にも力を入れています。指導を受けた農家では、不作の影響が小さかったとの報告もあり、こうした支援が生産者の生活の安定にもつながっています。
また、カカオハスクを活用した「コアラのマーチ」のアップサイクル商品を一部企業でテスト展開するなど、カカオの可能性を広げる取り組みも進めています。生産地支援や付加価値の高い製品を通じて、原材料の安定的な調達と社会的責任への取り組みを、引き続き進めてまいります。
近年、「しあわせな未来」につながる製品であることが購買動機になる時代へと移りつつあります。このような時代においては、社会的な意義をわかりやすい形で伝えていくことが何よりも大切です。例えば、カカオでは生産地の状況や当社の活動を多くの方に知っていただくために、専用のウェブサイトで情報発信を行っています。
―― 「噛むこと」のプロジェクトでは、大きな社会的インパクトを公表されましたね。
中島 「噛むこと」については、ガムを活用した口腔健康プログラム(※1)の普及が最大で約1.2兆円もの介護費を抑制する可能性があること(※2)を発表しました。さらに、自治体や歯科医師会、教育機関等との連携や、価値を体験できる場づくりなどを通じて、「噛むこと」による価値への理解を深めるための活動を重ねています。このような取り組みに共感してくれる人を増やすことで、より良い社会への原動力にしたいと考えています。
こうしたサステナビリティの活動は社内にも新たな動きを生み出しています。製造ラインで生じる端材を再利用したアップサイクルの企画や、環境負荷の少ない原材料の使用をきっかけに森林破壊に関する勉強会を開催するなど、サステナビリティを自分ごととして捉えたチャレンジが広がっています。このような前向きな挑戦を今後も全力で応援してまいります。
―― 貴社及び、菓子業界のさらなる発展において、「人」が果たす役割が大きくなっていますが、貴社の人材活用施策について教えてください。
中島 企業の基盤は人財であり、社員一人ひとりがいきいきと活躍できる環境を整えることは重要な経営テーマです。当社ではエンゲージメントスコアに注目しており、結果を真摯に受け止め、改善を進めています。多様な働き方の推進や風土改革に加えて、社員のご家族を会社へ招待するFamily Dayのような、社員と会社の絆を深める取り組みも行っています。また、社員がより創造的な仕事に力を注げるよう、業務ではAI活用を前提とした形へ整えていくようにもしております。
一人ひとりが持てる力を最大限に発揮できる会社であればこそ、より大きな成長と飛躍が実現できます。これからも、誰もが誇りとやりがいを感じながら働ける環境づくりを進めてまいります。
これまで培ってきた資産と強みを活かしながら、社会や環境を含めたすべてのステークホルダーのしあわせな未来の実現へ、本年も全力を尽くしてまいります。
最後に、皆さまのさらなるご発展を心より祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
※1:ガム咀嚼を含むお口のエクササイズと通いの場を組み合わせた予防介入プログラム ※2:愛知県豊田市の実証事業結果を全国の高齢者に拡大推計し、オーラルフレイルおよびフレイルの予防・改善に伴う介護費抑制効果を試算(ロッテ調べ)
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