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チロルチョコ × Vtuberがコラボ企画 自分の「コト」として楽しむ新機軸のPR2023.07.25(火)フードニュース

※本企画はフードニュース7月号にも掲載されております。

 チロルチョコ㈱(本社東京 松尾裕二社長)は、新たなカタチのプロモーション施策として、Vtuber(バーチャルYouTuber(※1))の「舞鶴よかと」さんとのコラボ企画(アンテナショップ紹介、オリジナルチロルチョコ作り、工場見学等に関連する動画投稿並びに8 時間以上の生配信)を行った。
 チロルチョコ側は動画を作成するための「体験」を提供し、舞鶴よかとさんがその体験をもとに動画を作成することで互いの魅力やブランドを高めるシナジー効果を発揮。双方のファンが一連の企画を自分の「コト」として興味を示し、積極的に関与して楽しさを共有する姿が話題になった。短期的な商品プロモーションではなく、新機軸の「コト消費」により、これまで接点のなかったユーザーの取り込みや、中長期的なファン層の育成、また、コアファンの潜在層の開拓に繋がるものとして注目される。 
 コラボ企画に関する取材と、舞鶴よかとさんへのインタビューを通じて、最前線のプロモーションの取り組みに迫った。

※1 YouTube等の動画配信プラットフォームで、3DCG等のキャラクターやアバター姿で活動している配信者

 舞鶴よかとさん(以下、よかとさん)は、福岡市中央区舞鶴生まれの「バーチャル博多っ子YouTuber」として2018年から活動を開始し、地元・福岡を盛り上げるコンテンツを多く発信している。
ゲーム配信のほか、福岡の食べ物やイベント動画のUP、また、クロマキー技術を活かした食レポを行うなど、独自性の高い配信活動を行っており、登録者数は約2.9万人(2023年6月末現在)。地元ラジオ局のレギュラー番組を持つなど、活動の幅を広げている。
 今回のコラボ企画はチロルチョコ側から提案した。その経緯として、「当社発祥の地である福岡の繋がりがあるということ、成長著しいVtuberという分野に興味があったことがありますが、一番の決め手としては、よかとさんの活動をみて、お互いにとって楽しい科学反応が起きるのではないかと思い連絡させていただきました」(チロルチョコ㈱ 開発部マーケティング室 リーダー・川崎佑真氏)と話す。

連続動画コラボ、8時間超生配信

 同コラボの大きな特徴の1つとして、企業とVtuberがお互いを尊重し、友好的な協力関係を築いたことが挙げられる。企画はお互いに楽しいと思えるアイデアを出し合い、内容を決定。チロルチョコ本社と松尾製菓の工場で撮影を行った。
チロルチョコ側としては「動画を1本でも投稿してもらえればうれしい」との考えがあった中、よかとさん側から、撮影後に多くの動画を投稿したいとの話があり、「#よかとチロルチョコウィーク」として1週間連続でチロルチョコ関連の投稿が行われた。
 3月13日~19日の「#よかとチロルチョコウィーク」では、「Shopチロルチョコ(前編・後編)」、「チロルチョコ研究室(前編・後編)」、「松尾製菓(前編)」(後編は4/20公開)をテーマとした6本の動画が投稿され、最終日の19日には8時間以上の生配信「チロルチョコクイズ120問!!」を実施。
 生配信では、よかとさんのファン「よかとも」(ファン総称)が数多く視聴するとともに、チロルチョコのコアなファンである、いわゆる「チロリスト」も視聴。よかとさんの配信をハブに、リアルタイムで「よかとも」「チロリスト」「チロルチョコ関係者」、また、興味を持って立ち寄った視聴者等が、同じ空間で盛り上がった。
次ページでは、よかとさんに同コラボの取り組みの経緯や思いを聞いたインタビューを掲載する。

【舞鶴よかとさんインタビュー】

―― コラボ提案を受けたとき、どのように思いましたか。またチロルチョコにどのような印象がありましたか。
 まず一番はじめに思ったことは「あのチロルチョコが自分に?」という驚きでした(笑)。チロルチョコはこれまでも好きでいっぱい食べていて、工場とアウトレットショップが福岡県田川市にあることは知っていましたが、福岡発祥ということは知りませんでした。地元企業ではなく、全国のお菓子といったイメージがありました。

―― コラボ企画の内容は、ご自身からも積極的にアイデアを出され、「#よかとチロルチョコウィーク」を行われましたね。
 今年1月に企画の打ち合わせをした際にそこで思いついたことを全て言いました。2月上旬にチロルチョコ本社、2月下旬に松尾製菓の工場を訪問したんですが、撮影後、「めちゃくちゃおもしろかった!」と思い、1本~2本だけ動画にするのはもったいないと考え、1週間連続した形で動画を投稿したいと提案しました。
 今回のコラボ動画に限らず、自分が楽しいことを、みんなも楽しんでくれることがうれしくて、「私は自分の好きなことをやって、自分のために配信するから、『よかとも』も自分のために見にきてほしい」という気持ちです。
 動画制作は自分自身で行っており、動画をアップする作業は大変ではありましたが、とても楽しく撮影でき、新たなチロルチョコの魅力に触れ、また、社員の方々がとてもよい方々であったことなど、様々なことがモチベーションとなり、妥協せずにやりたいと思い、チャレンジしました。

―― コラボ企画の中で特に印象に残ったことはなんですか。
 「チロルチョコクイズ120問!!」は、チロルチョコの社員の方々がこのために120問も問題を作成していただいたことに感動し、また、生配信にはチロルチョコのファン「チロリスト」の方々も配信に来ていただき、同じ場で共に楽しむことができて幸せな気持ちになりました。
 このほかにも、別の配信でチロルチョコの年表読み上げなどを行ったのですが、「よかとも」がその年表を覚えてきて詳しくなっていることや、アンテナショップに実際に足を運んだこと、また、チロルクイズ120問の内容を復習して覚えてくるなど、今回のコラボをきっかけにとして、視聴者が自分のコトとして楽しんでくれていることがうれしかったです。

―― 今後のコラボ企画等にも期待しています。
 今後もコラボをやらせていただければうれしいですね。ただ、実はこれまでコラボとか関係なく、好きな食品メーカーの商品の生誕祭を勝手に開催したこともありました(笑)。
 今回の取り組みを通じて、チロルチョコの商品、会社、社員の方々が大好きになったので、コラボなど関係なく、これからも自分が楽しいと感じることを、楽しんで発信していきたいと考えています。

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【独自の切り口の連続コラボ動画】

 今回の取り組みを時系列に追ってみると、今年1月の企画打ち合わせ後、2月に撮影を実施。3月3日に、組み立てて作るひな壇チロル「ビッグチロル〈ひなまつり〉」のライブ配信を実施。その後、3月12日に「#よかとチロルチョコウィーク」の概要を発表し、13日~18日に動画投稿、19日に生配信「チロルチョコクイズ120問!!」 を実施。その後、4月にはラジオ番組でもチロルクイズを行っている。
 「#よかとチロルチョコウィーク」の動画を見ると、「Shopチロルチョコ」の動画では、東京にある同店舗名のアンテナショップで試食体験を行ったほか、ガチャやムック本などのグッズや、展示されている年表を見てまわり、気付いたことを「トリビア」として紹介。また、 「チロルチョコ研究室」では、チロルチョコ本社でオリジナルチロルチョコ作りに挑戦。白ごはん、納豆、明太子、バナナ、イチゴ、といったよかとさんが考えた5つのフレーバーとともに、「プチロル」、「バラエティパック」のチロルチョコinチロルチョコ等を作成し、それらを社員を交えて試食した。
 「松尾製菓」の動画では、製造工程をわかりやすく説明するとともに、成型ラインを見学した様子を独特の感性の表現で紹介している。いずれの動画も、チロルチョコの新たな魅力を発見できる内容との印象を受けた。


Win-Winの関係、副次的効果も期待

 今回のコラボ企画の効果として、コラボ記念のTwitterキャンペーンにおいて、7000件以上の応募と約800件のコメントがあるなど反響も大きかったことが挙げられる。ただ今回のコラボを通じて、最も価値があったものは、定量的には評価できない部分ではないだろうか。
 印象的だったこととして、生放送のチロルクイズの120問目がある。同問題では、出題番号をいくつか羅列し、それらの答えの頭文字を繋ぎ合わせると、「よかとさん コラボ ありがとう」といったメッセージが答えとなるサプライズ的な演出が行われた。視聴者のコメント欄でも、拍手する絵文字が大量に打ち込まれるとともに、「こっちも泣いちゃってる」「涙でてきた」「目からチョコが溢れた」「今日のチロルチョコはちょっとしょっぱいな」などと、感動とおもしろさが共存する空間が一体となって作り上げられていた。

「チロルチョコ研究室」オリジナルチロルチョコ作り
生配信「チロルチョコクイズ120問!!」の最終問題


 このような、自らが積極的に関与して楽しむ「コト消費」は、ブランドへの親近感を高め、価値を感じてもらえるきっかけとなり、その効果は大きい。
 オランダの世界的なマーケティング会社・イノーバ社が発表した、食品の「2023年トレンドトップ10」では、トレンドの1つとして、「若い世代を中心に、企業からの一方的な情報発信ではなく、企業の活動に積極的に関わりたいといったニーズがあり、また、自らが情報を発信することに慣れている」といったことに言及している。
 チロルチョコ側からの提案を自分の「コト」としてよかとさんが楽しむことで、ファンも自分の「コト」として楽しんでいる今回のコラボは、まさにこのようなトレンドを捉えた取り組みではないだろうか。
 双方が発展的なWin-Winの関係を構築することで、双方のファンもそれぞれに親近感を持ちつづけ、ファンが情報発信する副次的な効果も期待できる。今回の取り組みは、プロモーション、ファンマーケティングの新たな可能性を示すものとして、今後も注視していきたい。

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