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ISMケルン国際菓子専門見本市2026 現地取材レポート2026.06.03(水)フードニュース

※本記事は「フードニュース5月号」の現地取材レポートを抜粋したものです。

「ISM ケルン国際菓子専門見本市」の初開催は今から55年前の1971年に遡る。1971年の西ドイツは高度成長と消費社会の成熟、国際貿易の拡大を背景に、冷戦下での緊張と緩和が併存する時代にあり、「ISM」は国際的な菓子ビジネスの発展を担う見本市として誕生した。
開催地のケルンは、戦前からの見本市都市としての実績と、欧州交通の要衝という立地、食品流通の集積を備えた最適地であった。
 当時の出展社は351社、来場者は5800人だったが、2026年には出展社は1567社、来場者は3万2500人へと飛躍的に増加し、展示場面積も1万6500㎡から12万㎡へと拡大している。
 弊誌では1970年代より現地での取材を継続しており、1990年3月号の「ISM特集」では当時のコンセプトとして、「スピード(Speed)」、「システム(System)」、「バーチャル(Virtual)」、「トラディション(Tradition)」の4つを挙げている。
 その後「ISM」は規模拡大とともに、製品展示中心の見本市から、原料や製造・包装機械を含むバリューチェーン全体を網羅し、機能性やサステナビリティといった新たなトレンドを取り込みながら進化してきた。 
こうした変遷を経て、創設時から一貫して国際商談の場としての機能を担い続ける一方で、時代の要請に応じて領域とテーマを拡張してきた点に、「ISM」の持続的な価値がある。
今年も来場企業には「Walmart(ウォルマート/米国)」、「Tesco(テスコ/英国)」、「Carrefour(カルフール/フランス)」、「イオン(日本)」など世界主要流通企業が名を連ね、小売・流通側の意思決定層が多数参加する点も「ISM」ならではの特徴といえよう。

◆次世代を担う原料・加工技術が集結

 今年の「ISM2026」(「ISMケルン国際菓子専門見本市 2026」(主催:KoelnmesseGmbH/ケルンメッセ社)は、2月1日~2月4日の4日間、ケルン市の「Koelnmesse」で開催された。今回の大きな特徴の一つが、原料・素材分野の展示を「ISM Ingredients(原料・素材展」として独立開催したことである。新たに87社が出展し、従来の同分野出展数の約3倍規模に拡大している。
これにより、「ISM(製品)」、「ISM Ingredients(原料・素材)」、「ProSweets Cologne(製造)」の3展示会が連携する形で、原料から製造、最終製品に至るまで、菓子・スナック産業のバリューチェーン全体を網羅する統合的な展示構成が実現した。
「ISM Ingredients(原料・素材展)」では、機能性と気候配慮を両立する次世代素材が集結。アップサイクル、発酵技術などを軸に、“食の再設計”を志向した提案が広がり、原料レベルから菓子市場の変化を印象づけた。
また、世界有数の農産物・食品原料メーカーである「Cargill(カーギル)/米国」が「NextCoa™」というカカオ代替ブランドを大々的にアピールするなど、カカオ代替素材の普遍化・グローバル化が加速していることを印象付けた。

◆イノベーションエリアには岩塚製菓も

 イノベーション領域では、「Lab5 by ISM」が引き続き注目を集めた。16カ国から30社以上のスタートアップ・スケールアップ企業や、岩塚製菓の「BEIKA」など欧州市場への進出を虎視眈々と狙う新製品や新サービスが、アピール合戦を繰り広げたほか、「ISM Functional Sweets」では機能性菓子市場の拡大を反映した提案が行われた。
また、「ISMの必見スポット」ともいえる「New Product Showcase」では150点以上の新製品が紹介されたほか、「ISM JAPAN」「ISM Middle East」のアワード受賞製品も展示されるなど、グローバルの最新トレンドを俯瞰できる場となった。

◆「新製品ショーケース」が映し出すトレンド

 今回の「The top 3 innovations of ISM in 2026(新製品アワードトップ3)」を見ると、現在のグローバル菓子市場では、機能性・体験価値・情緒性を組み合わせた提案が強まっていることがうかがえる。
 最優秀賞のクレアチン配合エナジーグミバーは、プロテインに続くスポーツニュートリション需要を背景に、“筋力・回復”といった機能価値を菓子フォーマットへ落とし込んだ点が特徴。バナナ×ダークチョコという定番性を持たせながら、「高機能でもおいしい」を追求する流れを、グミで体現したことが特筆されよう。
 2位のエスプレッソマティーニ入りチョコレートは、カクテル文化とコーヒートレンドを融合した“大人向け体験型菓子”であり、液状フィリングやアルコールテイストによる没入感が特徴。近年の欧州市場では、単なる高級化ではなく、「味覚体験」そのものを訴求する方向性が強まっていることが読み取れる。
 3位のシナモンロール風クッキースラブは、ホリデー向け菓子としてクラフト感、ビジュアル性を重視した製品。焼き立てのシナモンロールといった“情緒価値”に加え、「食べられるアート」としての見せ方を打ち出しており、SNS時代を意識したデザイン性の重要性を示している。

◆新製品ショーケース イノベーションTOP3

□TOP1(金賞)

*クレアチン配合のバータイプグミ

「CREATINE-Gummy Bar with chocolate」/Creaciones Jugavi(ブランド名:Candy Glam)/スペイン

◆おいしさが機能性に追いついた
「ISM2026」の「New Product Showcase」で金賞を受賞したのは、スペインのブランド「Candy Glam」のクレアチングミバー「CREATINE-Gummy Bar with chocolate」だった。バナナ風味のグミバーを、カカオ70%のダークチョコレートでコーティングしたもので、1本当たり3gのクレアチンを配合している。これは1日に必要とされる摂取量に相当するという。
クレアチン自体はスポーツサプリメント市場では広く知られた機能性素材であり、粉末やサプリメントは数多く存在する。一方で、独特の苦味やえぐみ、粉っぽさなどから、“菓子”としておいしく仕上げることは難易度が高い素材とされる。そうした中で同商品は、グミバー形状を採用するとともに、甘い香りのバナナフレーバー、高カカオチョコレートのコクと苦味を組み合わせることで、機能性素材特有の違和感を抑制。単なるサプリメントではなく、“おいしく食べられる機能性スイーツ”として成立させている点が高く評価された。
味わいについてはさまざまな評価があることを踏まえつつ、機能性菓子が“ついにここまで来たか”と思わせるおいしさであったことを明記しておきたい。

◆機能系スタートアップが示す自信
また同社担当者は、「市場にはクレアチン製品は存在するが、“グミバー”“高カカオチョコレート”“機能性スイーツ”という組み合わせの商品は他にない」と自信を示し、「機能性素材を、おいしく摂取できること」が最大の特徴だと強調した。 
また、クレアチンについては従来のスポーツ・筋力用途だけでなく、近年は脳機能や集中力に関する研究も進んでいるという。同社では特定の年代やアスリート層に限定するのではなく、“健康と菓子を愛するすべての人向け”の商品として展開していく方針を示した。
商品は3カ月前にスペイン国内で販売を開始したばかりで、「ISM」開催時点では同国市場のみの展開だという。今回の受賞を機に、新規顧客やメディア関係者の来訪が増えており、「今後は日本を含む世界市場への展開を目指す」と意欲を見せた。
同社は昨年設立されたばかりの新興メーカーで、家族経営によるスタートアップ企業。従業員数は13人で、製造工程を自動化した新工場を立ち上げている。現在は、クレアチンバーのほか、ヴィーガングミや果汁を使用したグミ商品など、健康志向を軸とした商品群を展開している。
ヨーロッパでは現在、ビタミンや機能性素材を“おいしく摂取したい”とする需要が急速に拡大しているという。担当者は「数字で示すのは難しいが、日々成長していると感じる」とコメント。従来のサプリメントとは異なり、“菓子として楽しみながら健康価値を取り込む”方向へ、市場が進化しているとの見方を示した。
同商品は健康価値と菓子としてのおいしさを両立させた提案として、「ISM2026」を象徴するイノベーションの一つとなった。

□TOP2(銀賞)

*人気のカクテルが味わえる、伝統再評価の洋酒チョコ

「Chocolate Espresso-Martini Pearls」/Chocolaterie Carré/ベルギー

べルギーのチョコレートメーカー「Chocolaterie Carré」は、銀賞を受賞した洋酒入りチョコレート「Chocolate Espresso-Martini Pearls」について、伝統製法と現代的なカクテルトレンドを融合させた点が評価されたとの見方を示した。
同社の製品はコーンスターチで型を作り、砂糖シロップを結晶化させた外殻の中に、液体アルコールを封入する伝統技術を採用。本物の酒を飲んだような風味が特徴という。同製品では近年欧州で広がる“コーヒー×アルコール”のトレンドを背景に、人気のカクテル「エスプレッソマルティーニ」(※1)を採用。従来より小型化した形状と、トレンドカクテルを組み合わせ、伝統的なウイスキーボンボンを現代的に再解釈した点が評価につながった。
同社は32年前、創業者夫妻が自宅のキッチンでスタートした企業。現在は2000㎡規模の工場を持ち、26カ国へ輸出するまでに成長した。
洋酒チョコ市場については、安定して推移しているものの、近年ではネグローニ(※2)などカクテル人気が高まっていることから、同社では新しいフレーバー提案によって需要を広げていく方針だ。
取材時にはリモンチェロやウイスキー入り商品も紹介され、「依頼があればさまざまな酒で商品化できる」とコメント。日本酒や梅酒との相性にも関心を示した。
このように欧州におけるチョコレート市場は、ドリンク文化との融合により、新しい食体験の提供を通じ、喫食機会と購入層の拡大を目指している。そのひとつの結実として、同商品の受賞を祝いたい。

□TOP3(銅賞)

*クリスマスクッキーの新提案

「Cookie slab “Cinnamon Roll”」/Gottfried Wicklein/ドイツ

銅賞受賞の「Cookie slab “Cinnamon Roll”」は、トレンドであるシナモンロールの風味を再現し、芳醇なシナモンの香りと心地よい甘さが堪能できる。また、クリスマス仕様としては他に類を見ない“バー形状のクッキー”となっている。チョコレートバーのように割ってシェアできる“バー形状のクッキー”という新しさに加え、表面には雪の結晶をイメージしたシュガーコーティングを施し、クリスマス菓子に伝統とかけ合わせた新風を吹き込む。
開発のきっかけは、同社スタッフが米国の小さなベーカリーで見つけた「クッキーバー」。そのアイデアを持ち帰り、ドイツ市場向けにアレンジしたという。当初のアメリカ版は柔らかい食感だったが、今回の商品ではクリスピーな食感へ改良。「今のほうが完璧」(担当者)と自信を見せた。
同社は1615年創業で、世界最古級のジンジャーブレッドメーカーの一つ。クリスマス向け商品を主力としており、ヨーロッパではスーパーなど幅広い販路で展開している。担当者は、「長い伝統を維持しながらも、常にイノベーションを追求している」と語り、カップに掛けて楽しむクッキーなど、遊び心ある商品開発にも取り組んでいるという。 
このように欧州の伝統菓子市場では、長い歴史を持つカテゴリーであっても、“形状転換”や“シェア提案”による新たな価値創出が進んでいる。400年以上の歴史を持つ老舗メーカーが、“初めてのクッキーバー”に挑戦したこと自体、欧州菓子市場のイノベーションの奥深さを感じさせた。


※「フードニュース5月号」では「ISM2026」の現地取材レポートとして、今年大きな注目を集めた「ISM Ingredients(原料・素材展)」の詳細、注目製品・ブースの紹介、日本企業の動向、学ぶべきグローバルトレンドなどを掲載しています。ぜひご一読ください。

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