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新潟に本社を構える米菓メーカーが多いワケ2021.04.22(木)スタッフおすすめ

こんにちは、編集部のTT(ティティ)です。突然ですが、下記の写真をご覧ください。

 (1)「亀田の柿の種」(2)「雪の宿」(3)「味しらべ」(4)「ばかうけ」(5)「ぼんち揚」(6)「歌舞伎揚」。どれも一度はスーパーやドラッグストアで目にしたことのある商品ではないでしょうか。これらは製菓業界でいう「米菓(べいか)」のカテゴリーに属するトップ6メーカーの全国ブランド(NB)代表商品です。

では、これらのブランドはどのメーカーが製造しているでしょうか。

正解は、

(1)「亀田の柿の種」が亀田製菓(本社:新潟県)、(2)「雪の宿」が三幸製菓(本社:新潟県)、(3)「味しらべ」が岩塚製菓(本社:新潟県)、(4)「ばかうけ」が栗山米菓(本社:新潟県)、(5)「ぼんち揚」がぼんち(本社:大阪府)、(6)「歌舞伎揚」が天乃家(本社:東京都)。

もし、全てのメーカー名を当てることができたら、日常的に米菓を好んで食べている方ではないでしょうか。

今回お伝えしたいテーマは、上記6ブランドのうち4ブランドが新潟に本社を構える企業で製造されているというお話です。

 「米菓(米の菓子)なのだから原材料は米だ。新潟は米の産地として有名だから調達コストの観点から新潟のメーカーが多いのではないか」

このように考える人が多くいると思います。もし上記ブランドを手に取る機会があったら、原材料名を確認してみてください。例えばせんべいなら「うるち米(国産、米国産、中国産)」など、複数の国のうるち米をブレンドして製造している商品がたくさんあるのがわかると思います。また、米菓製造に使用するうるち米や餅米は、主食として食べるそれらよりも安価で取引されるため、新潟ではあまり好んで生産されていないのが実態だそうです。

米どころの産業育成策

ではなぜ米菓のNBは、新潟県のメーカーで多く生産されているのでしょうか。その理由が、学術誌「産業学会研究年報第28号」に掲載されていた論文「新潟県における米菓産業の産地形成とイノベーション」(清水希容子、2013年)に記述されていたので紹介します。

同論文によると、全国で米菓が一つの産業として成長し始めた1950年代から60年代は、米菓といえばバラ売りが基本で、揚げたてのものが主に食べられており、運搬に伴う壊れも多かったため、地産地消がほとんどだったそうです。ですから、1964年ごろまでは東京や大阪で本社を構えるメーカーの生産量が多く、新潟のメーカーの生産高は全国3位の位置づけでした。

このような状況の中で、新潟県は1958年、公設試験研究機関「新潟県農業総合研究所食品研究センター」を設立し、新潟県内の米菓メーカーが加盟社になっている「新潟県米菓工業共同組合」と連携することで米菓産業の育成を図りました。同センターの研究で重視されたのは、暗黙知である職人技を科学的に解明し、機械化・自動化の技術に結びつけること。確立した製造技術理論は、加盟社向けの講習会を頻繁に行うなどして情報公開に努め、新潟産米菓が全国進出できるよう後押ししました。米菓に対しここまで積極的に産業育成を図った地方自治体は新潟県以外ではありません。

「かつて食品研究センターで作成された『ガイドライン』が今でも当社の製造現場の中で生き続けています」(新潟の米菓メーカー社長談)

米菓の発達に産業育成策あり。厚焼き・薄焼き、ハードにソフト、そして甘い、辛い、甘じょっぱい。今我々が多様なスタイルの米菓をスーパーなどの身近な場所で手に入れて楽しむことができるのは、約60年前から進められている新潟県の米菓産業育成策に同県の米菓メーカーがうまくはまり、米菓を職人の手作り商品から工業製品にならしめた産業発展の歴史があってこそのものだといえそうです。

※弊誌4月号の特集では「米菓」を取り扱っています。

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