「Summer Fancy Food Show 2022」レポート2022.07.25(月)フードニュース
米国最大級食品見本市、3年ぶり開催
日本菓子メーカー販路拡大へ出展
米国東海岸最大級の食品見本市である「Summer Fancy Food Show 2022」が6月12日~14日、ニューヨークで開催された。コロナ禍の影響で3年ぶりの開催となった今回、日本からは(一社)全日本菓子輸出促進協議会(TACOM、小髙愛二郎理事長=㈱エイワ代表取締役)の会員である㈱ギンビス、㈱エイワ、㈱ちぼりホールディングス等の企業が出展し、海外事業の拡大に向け主力商品をPRした。
本誌では上述した3社にインタビューを行い、今回の展示会に参加した狙いや商品の反響とともに、各社の今後の課題や海外展開の方針、また今回展示会の印象等を聞き、国際菓子のトレンドと日本菓子メーカーの海外展開の方向性を探った。
ギンビス:現地系市場の開拓へ
ギンビスは2017年以来久しぶりの出展となったが、今後は、米国の3大展示会である「Winter Fancy Food Show (1月~2月開催、ラスベガス)」、「The Sweets & Snacks Expo(5月、シカゴ)」、今回展示会にそれぞれに出展し、米国での市場開拓に注力していく方針。これら展示会を通じて、現地のバイヤーと直接的なコミュニケーションを図り、またアプローチすることで、特に現地の米系小売業との商流を強化していきたい考えだ。
同社商品は米国市場において、日系スーパーをはじめとするアジア系市場では70~80%ほどの高い配荷率を実現している。ただ、「アジア系市場の規模は米国市場全体の10%程度であると考えられており、残る90%を占める現地系小売業などの開拓が今後の鍵になる」(同社国際事業部次長 斎藤哲也氏)とし、新たな市場に積極的にチャレンジしていく姿勢を見せている。
米国展開の重点的な戦略商品としては、「たべっ子どうぶつ(Dream Animal Biscuits)」、「アスパラガス(Asparagus Shaped Biscuits)」、「しみチョココーン(Choco Starz)」の3ブランドがあるが、現地系には特に「しみチョココーン」を展開していく方針。
同商品はスナック内部までチョコが染み込み、サクサクとした食感が特徴的な商品だが、米国には同様の商品が少なく、差別化できる強みを発揮したいと考えている。今回の展示会においてもバイヤーからの評判が非常に高く、手ごたえを感じたとのこと。
これを足掛かりとして実績を積み上げ、横展開に繋げることを目指している。米系大手小売業との商流・物流・ロット等含めたサプライチェーン構築とその多様化の検討を進めていきたい、としている。
加えて「しみチョココーン」ブランドに続く商品展開も図っていく。その一つとして、昨年キューブ型ラスクにチョコを染み込ませた「GINZA RUSK」が、米国の基準等に沿った原料での製造に目途が立ったため、今後展開していくことを目指している。
米国以外の地域は、ギンビスブランドのイメージの高い香港、台湾、韓国、タイ等のアジア市場でNB商品の展開を強化していく。
今回の展示会に出席した同社国際事業部係長 阿部俊一氏に展示会の印象を聞いたところ、「イノベーションをテーマとしたブースが盛況であった。栄養価を強く訴求した商品や、グルテンをはじめとした『〇○フリー』といった健康志向を意識した展示が目を引いた」と語る。
また、健康訴求とともに、味わいでも満足度の高さを追求した商品が、台頭していたとのこと。健康訴求商品のトレンドは、「機能性+α」の新しいフェーズに入ったようだ。
エイワ:バルク要望増、PB商品も
同展示会への出展は2015年からスタートし今回で6回目。出展の狙いは自社商品のPRとともに、世界的なトレンドを把握すること。また、近年バイヤーが特に気に掛けることが多くなった原材料規制等について、「何が」注目されているか、また「何に」注目していくのかを確認した。
出展ブースでは同社の多様なマシュマロ商品の展示・試食を実施。今回の取り組みを通じて、スナックとしての認知拡大を感じた。バルク供給の要望が増加したほか、ヨーロッパからPB商品を要望する商談が入り、現在進行している。
また、米国では季節性のあるハロウィンのようなプロダクツやBBQにおいて、焚き火の炎を利用して作るスイーツ「スモア」の需要が伸びており、マシュマロへの興味が年々強まっていることも確認した。
一方、数店舗規模の小売店への配送は現在できておらず、同配送方法の確保等が今後の課題となっている。
このほか、国際的に、「Gluten Free」「Halal」 「Organic」 等をパッケージに表記するのが当たり前になりつつあり、ユダヤ教徒に対応した「Kosher」の表記も急増。SDGsの観点から「Fair Trade」の注目も高まっていることから、これらに対する対応も求められる。
加えて、商品が高品質であることが当たり前となっており、このままでは日本の「高品質」という売りが薄れてしまうのではないかと危惧している。今後、高品質の根拠等を明確にすることが重要となっていきそうだ。
展示会全体については、前回2019年は約2600社だったが1800~2000社と減少しており、大型ブースも減少した印象を受けたとのこと。今後の展示会自体がどのように変わっていくのか注視していきたい、としている。
ちぼりホールディングス:赤い帽子「KUKKIA」新感覚コンセプトに売り込み強化
今回の出展の主な目的は、2月にラスベガスで開催された西海岸中心の展示会とは異なり、東海岸とヨーロッパからの来場者をターゲットにした商品の紹介とPR活動を行うこと。また、アメリカ市場における最新の食トレンドの情報収集も行った。
出展ブースでは、同社グループの現地法人を通じ、主力ブランド「赤い帽子」から、ホイップされたチョコを薄焼きクッキーとゴーフレットでサンドした、3つの食感が特徴的な「KUKKIA(クッキア)」を出品。
同商品は、昨年から米国で大手ホールセールクラブへの全国導入がスタートし、来場者から「近所の店で見かけた」「気になっていた」といった声もあり、認知度の明らかな前進を実感することができた。
今後、エスニックでもアジア系でもない「クッキーとゴーフレットのコンビネーション」という新感覚のコンセプトをより全面に打ち出し、販路拡大に努めて行く方針だ。
展示会を通じての印象については、肌感覚ではコロナ以前の水準近くにまで戻ってきたように感じており、ヨーロッパ、特にイタリアとスペイン企業が広くブースを設け、アメリカ市場への期待感が感じられたほか、アメリカのスタートアップ中小企業の出展が多く、盛り上がりを見せていた。
来場者は通常通り、東海岸エリアの小売店やディストリビューターが中心で、メジャーな小売チェーンのバイヤーは少なかったように思える。今回はホリデーウィーク1週前に開催で、日程の影響があったようだ。