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【人財活躍イノベーション】春日井製菓2024.09.25(水)フードニュース

 

 

 夏休み最後の週末となった8月31日、多くの人で賑わう東京・原宿駅近くに、「つぶグミ」のラッピングビルが出現した。
 春日井製菓㈱(本社名古屋 春日井大介社長)の主力グミブランド「つぶグミ」は、今年誕生30周年を迎え、その記念プロモーションとして今年2月より「つぶ&ピース!プロジェクト」を展開している。今回はその一環として、「つぶグミ」からインスピレーションを受けて制作したアート作品を展示する企画展「つぶグミュージアム」(~9月8日)が開催されるのだ。
 「カルチャーの発信地である原宿で、『つぶグミ』のアートイベントを開催できうれしく思います。国内外問わず様々なお客様に、『つぶグミ』のアートを楽しんでいただきたいです」と語るのはマーケティング部 カテゴリー1課 グミチームの山根さん。「つぶ&ピース!プロジェクト」のリーダーだ。
 同プロジェクトは従来の周年記念キャンペーンのように、周年記念をフックとした売上増を目指すのではなく、「つぶグミを楽しむ人が主役」という独自のテーマで2月より展開してきた。同プロジェクトの立ち上げに際し山根さんは、「『つぶグミ』ってどんなブランドなんだろう」と、改めて考え直したという。

「つぶ&ピース!プロジェクト」を企画・運営するチームメンバー。

 「『つぶグミ』のありたい姿として、食べる人それぞれの『つぶグミ』があり、食べる人たちを主役にして、それぞれの人の個性を輝かせることができるところに『つぶグミ』の価値があると気づいたんです」
 実施するプロジェクトについては、特定の人や物事に頼らず、多彩なジャンルで展開していくこととした。2月からの第1弾・「つぶグミ×アイドル」では、個性の違う“つぶ”ぞろいのメンバーを集めたシャッフルユニット「GOODM!X」を結成し、「つぶグミ」のブランドメッセージを届ける「自己紹介」の取り組みと位置づけた。アイドルたちを応援する人が「つぶグミ」を知り、ブランド周辺外のユーザーに向けた認知度の向上で成果を上げた。

 5月からの第2弾ではガラッと変わって、「アート」をテーマに展開。「つぶグミアートキャンペーン」では「つぶグミ」を並べる、「つぶグミ」を描くなど、思い思いの手法で「自分らしさ」を表現した作品を、「つぶグミ」公式Xで公募。ユーザーとのつながりを目的に大型ショッピングモールでのワークショップも開催し、予約枠がすべて埋まり、キャンセル待ち希望者が出るほどの盛況となった。
 そして「アート」テーマの流れをくむ「つぶグミュージアム」では、上記の一般公募からの作品展示に加え、かねてから「つぶグミ」好きとして知られるメディアアーティスト・落合陽一氏を始め、3名のアーティストによる、「つぶグミ工場」にインスパイアされたアート作品(※)が展示された。
 会場での「つぶグミ」の販売は一切なし。チラシやカタログも存在しない空間で、一般公募作品のほのぼのとした温かさから、最先端現代アート作品による非日常体験まで、見る人それぞれに「つぶグミ」アートの世界観を堪能していた。(※)「BEYOND THE CLOUDS NO.163.164.165」(鷲尾友公氏作)、「tender moments」(さわひらき氏作)

(写真左より)「アートワークショップ」で「つぶグミアート」に取り組む子どもたち。落合陽一氏の作品「物化する回転窯:溶解する日常・漂白される芸術・グミ環世界」。回転する窯の内部を上部のカメラで撮影し、背後の壁面にAIによるデジタル画像が投影される。「つぶグミな私」「私の好きな猫たち」など、「わたし」をテーマに制作された一般公募作品。

 「つぶグミ」誕生30周年記念プロモーション「つぶ&ピース!プロジェクト」は、「つぶの日」(2月6日)から「つぶグミ誕生日」(12月1日)まで、約1年に及ぶ大プロジェクトだが、その企画・運営の中心はリーダーの山根さんに加え、同じグミチームの吉村さん、柴﨑さんの女性3人グループが担っている(新メンバーが加わり、9月からは4人体制に)。
 山根さんは入社後1年間は商品開発を担当。その後、経験がないにもかかわらず、「山根の企画が見てみたい」と、可能性を感じた企画チームリーダーの後押しもあり、商品企画に携わる。2020年に新設されたマーケティング部へ異動後、2022年の「つぶグミPREMIUM」のリニューアルを成功に導き、現在は「つぶグミチーム」のリーダーとして、同プロジェクトでタクトを振るっている。
 吉村さんは新卒採用面接の際、経験はないもののマーケティング職を志望し、1年目からの現職で希望を実現させたが、その配属理由は、経験以上にその人の「可能性」を見る採用方針によるものだ。
 前職の食品メーカーから、昨年10月に同社への転職を果たした柴﨑さんは、「お菓子は誰かを笑顔にしたり、楽しませたりする力があると感じていましたが、春日井製菓のHPやSNSを見た瞬間、自分はここで働くんだってビビッと閃いたんです」と話す。
 社員一人ひとりの「可能性」を宝物とする同社の人財育成方針と、「つぶグミを楽しむ人を主役にしたい」、「お菓子で人を楽しませたい」という想いが引き寄せあったかのように、今回の「つぶ&ピース!チーム」は結成された。

「つぶグミュージアム」を盛り上げるべく奮闘する、「つぶ&ピース!」のメンバーたち

 大きな予算も投下される基幹ブランドの周年プロモーションとして、結果を出すことへのプレッシャーは重い。社内他部署との打ち合わせはもちろん、広告代理店、タレント事務所、ショッピングモール、アーティストなど、考え方や利害も異なる関係先との難しい折衝、そしてイベント時の休日出勤なども重なり、メンタル・フィジカル両面できつい時期もあったという。しかし、
●上下関係なく意見を言い合える 

●つらい時期には励まし合い、ケアする 

●普段の会話のなかでも、笑わせたい、おもしろいことを言おうとする 
といった「つぶ&ピース!チーム」のポジティブな個性と、「つぶグミ」をもっと知ってもらいたい、「つぶグミ」で人を楽しませたい、という強い想いを原動力に乗り越えてきた。
 ユーザーからの反響も大きな力となった。「2月のアイドルコラボの際には、Xでの想定以上のインプレッション数を記録しました。加えて歌詞への共感など、ブランドメッセージが伝わったと実感できるコメントもたくさんいただきました」(山根さん)
 そしてアイドルとのコラボでは、コラボ先との関係性に対する気づきもあった。「“ユニットメンバーご自身の個性を輝かせるには?” とリサーチを重ねたことが、『つぶグミ』らしいコラボにつながったと感じています。ファンの方々の反応をていねいに想像し、コラボ先を理解しようと努めることの大切さを実感しました」(吉村さん)
「つぶグミュージアム」では、「つぶグミ」のありたい姿についても再確認。
「アーティストが解釈した『つぶグミ』は、ポップさと共に暗さを感じるものでした。“自分らしさ”は明るい面だけでなく、悲しさや虚しさも含めたものであること、『つぶグミ』はそういった人間のいろいろな面に寄り添える存在でありたいと改めて感じました」(山根さん)
 進化する「つぶグミ」の価値を、今後どのように訴求していくのか、期待と楽しみが膨らんでいく。(※次回記事では1年間の総括をまとめる予定)。

* 吉村さんMEMO*
 2020年入社以来、マーケティング一筋。今回のアイドルコラボでは、主にコラボ先のリサーチと企画アイデア出しを担当。もともとはライトなファンだったが、今回をきっかけに大ファンに。ファン目線での取り組みでアイドルコラボ成功に貢献した。「モチラ」「グミだよ。」といった新ブランドも担当。

* 柴﨑さんMEMO*
 2023年10月入社。プロジェクトスタート後の加入となったが、同社にノウハウのなかった「アートワークショップ」の仕切りを任され、多方面への情報収集・調整に奔走し、盛況の功労者となる。

*本企画は「フードニュース9月号」にも掲載しています。

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