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【新春トップインタビュー】 井村屋㈱ 代表取締役社長 岩本 康 氏2026.01.26(月)フードニュース

磨き上げる価値と技術、新工場で加速
供給力の底上げで次のステージへ

※本企画は「フードニュース2026年新年号」にも掲載しています。

―― 2025年3月期は前年度に続き増収増益、菓子カテゴリーも好調に推移していますが、まずはその要因をお聞かせください。

岩本 主力のアイスクリームが、猛暑の影響を受け大きく伸長しました。2024年3月に「あずきバー」を値上げしましたが、価格改定効果と猛暑による需要増が重なり、冷菓のウェイトが高い当社にとって大きなプラスとなりました。

   菓子カテゴリーでは賞味期間5年6カ月の「えいようかん」や、「片手で食べられる小さなようかん」などワンプッシュで食べられる商品が堅調でした。特に「えいようかん」は、防災意識の高まりを背景に、EC販売でも需要が増加しています。

  シリーズ品の「チョコえいようかん」も好調で、OEM供給している“チョコようかん”タイプの製品も想定以上に伸び、大きく貢献しました。ようかん全体が改めて脚光を浴びていると感じています。

―― 値上げと販売数量のバランスについてはどう見ていますか。特に価格改定後の数量の変化について教えてください。

岩本 アイスクリームは値上げ後も数量が増え、良い結果となりました。一方で他の一部商品は数量がやや落ち、お客様の価格感度が確実に高まっていると感じます。原料が高騰しても、単純な価格転嫁だけでは難しい局面が増えています。それでも2025年3月期は売上・利益ともに伸び、利益率も改善しました。今後は大型投資も控えており、適正な利益を維持しながら持続的な経営につなげていく必要があります。

―― 2026年3月期上期の状況はいかがでしょうか。

岩本 2025年3月にも「あずきバー」を価格改定しましたが、数量は落ちず前年を上回り、上期として過去最高の約2億7200万本を出荷しました。冷菓が牽引し、ようかん、カステラ、冷凍和菓子なども好調で、営業利益も大きく伸びています。

 冷凍和菓子では「井村屋謹製 たい焼き(つぶあん)」が発売2年目で売場も拡大傾向で、新アイテム「同 (白つぶあん)」も投入するなど、あんに強みを持つ当社らしい展開が進んでいます。

―― 続いて各カテゴリーについて教えてください。まずはようかんの今後の重点施策はいかがですか。

岩本 ようかんは備蓄需要の高まりを背景に、非常に強いカテゴリーへと成長しています。生産能力の増強が課題であったため、カステラやどら焼きの焼成ラインを三重県内の「あのつFACTORY」に集約し、本社工場のスペースにようかん設備を拡充する計画を進めています。生産能力は約130%に高まる見込みで、災害時の急激な需要にも応えられる体制づくりを目指しています。

 “いつも食べているものが非常時でも食べられる安心感”は大切な価値観であり、生産改革と供給体制の強化を続けてまいります。

―― 冷凍和菓子や冷凍パックまんの今後の展開についてお聞かせください。

岩本 冷凍関連は全体的に大きな手応えを感じています。「井村屋謹製 たい焼き」は、大きな広告は行っていませんが、売場を起点にした地道な取り組みを続けています。県内で真鯛の養殖を行う三重県漁業協同組合連合会様と連携した「鯛の日(10月第2月曜)」に合わせて、地元小売店様でのプロモーションなど、地元企業同士の取り組みを行っています。

 冷凍和菓子は今後さらに伸びる市場として期待しており、“あずきのおいしさ”をしっかりと打ち出すことが鍵です。独自性のある商品開発に取り組み、売場をリードできる存在を目指します。

 冷凍パックまんでは、このたび18年ぶりにテレビCMを放映し、「朝食シーン」をテーマにした提案を行いました。手軽さやタイパ・コスパへの支持が広がっており、「肉まん・あんまん」に加え、当社独自の焼成ラインを活かした「mini PIZZA ベーコン&チーズ」も好調です。蒸し+焼きの工程で製造することで、電子レンジ調理でも焼きたてに近い仕上がりで、ピザカテゴリーとしての売場展開も可能になりました。焼成技術を活かした新商品にも可能性を感じています。

―― 2024年度~2026年度の中期経営計画「Value Innovation 2026」の進捗と、その中で重要となる取り組みについて教えてください。

岩本 おかげさまで順調に推移しており、計画をやや上回るペースです。最終年度の目標「売上高550億円、営業利益33億円、海外事業売上高比率8.8%」も視野に入っています。

 一方で近年は猛暑の影響も顕在化しており、季節商品の投入時期の見直しも必要であると感じています。「ようかん」など年間を通して安定する商材と、季節商材の2本柱でリスク分散する体制づくりを進めています。

 また、昨年3月に竣工した「アップサイクルセンター」は、サステナビリティ戦略の中心を担う施設です。従来は惣菜原料や飼料として使われていた「おから」や「あずきの皮」を粉末化し、原料として再活用する取り組みを本格化しています。将来的にはこれらを自社商品へ組み込む“完全循環”を実現したいと考えています。

 サステナブルであるだけでなく、「おいしさ」に直結するかどうかが重要で、開発部門と連携しながら商品化を検討しています。食品企業として「ゼロエミッション」を実現することは使命であり、中計期間にとどまらず長期で取り組むテーマとなっています。

―― 今年は創業130周年の節目を迎えます。重点施策を教えてください。

岩本 130周年に合わせて、アイスクリーム新工場を本社工場敷地内に建設中です。生産能力向上だけでなく、「あずきバー」へのコーティングなど新しい価値を提供できる設備を備え、製品の可能性をさらに広げる拠点として位置づけています。

 当社は和菓子生産を祖業としていることもあり、和菓子を年間100億円規模の柱に育てることを掲げています。あんを炊く技術、あずきの加工技術を一段と磨いていく所存です。「Polish up(磨きをかける)」は以前から私が強調してきた言葉で、今年も社内に浸透させていきたいと考えています。

 海外展開では、北米・カナダに加えてオーストラリアにもカステラの販路を広げています。カステラは海外向けだけで10億円規模に近づいており、特に米粉を使ったグルテンフリーのカステラは海外レギュレーションにも適合し、もちっとした食感は国内でも受け入れられる可能性を秘めています。

―― 最後に岩本社長が2026年を漢字一字で表すとすると、どんな字になりますか。抱負とともにお聞かせください。

岩本 「磨」です。商品やブランド、そして社員一人一人が、より高いレベルを目指して磨き上げていく――そんな想いを込めています。

 値上げが続き、消費者の選択はますます厳しくなっています。価格に見合う価値がなければ選ばれませんし、値上げだけでは対応しきれない場面も増えています。だからこそ、井村屋にしか出せない“特色”をいかに商品に込め、磨き上げるかが重要です。

 繰り返しになりますが、あんを炊く技術や、あずき加工のノウハウは創業以来の蓄積であり当社の強みです。これを和菓子、冷菓、冷凍食品といった幅広いカテゴリーに展開し、「この価値なら納得できる」と感じていただける商品を届けていきたいと考えています。伝統を大切にしながら、次のステージへ進むための“磨き”を重ねていく――そんな1年にしたいと考えています。

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