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【2022新春トップインタビュー】㈱ブルボン 代表取締役社長 吉田 康氏2022.01.26(水)

幅広い商品展開堅持し、優位性発揮 

1000年企業目指し、創業理念貫く

—— まずは貴社の 2021 年の実績からお聞かせください。
吉田 コロナ禍も 2 年目に入り、インバウンド消失、CVS と自販機の減速などマイナス要因もありましたが、巣ごもり需要による大袋商品の好調、SM の復調などプラス要因でカバーし、全体では、悪くない結果に着地しそうです。

—— 厳しいコロナ禍の環境の中、どのような打開策を打たれたのでしょうか。
吉田 2021 年の前半にはカンフル剤的な施策として、当社初となるアニメキャラをデザインした、「プチ『鬼滅の刃』パッケージ」を投入し、上期の実績に貢献してくれました。これまでも菓子業界では、タレントやキャラクターとコラボした商品がヒットしてきましたが、2021 年は例年以上の反応があった 1 年だと位置づけています。しかし、こうした短期的な好調には必ず反作用があります。やはり当社としては、短期的なものにすがるだけでなく、ブランドをコツコツ育てることに注力していきたいと考えています。

—— 貴社には多様なブランドがあり、ひとつのブランドでのカテゴリー横断商品も幅広く展開されていますが、この基本方針は継続される意向ですか。

吉田 当社は「ルマンド」や「アルフォート」を代表とするロングセラーブランドが数多くありますが、ひとつのブランドを全チャネル、全エリアで大ヒットさせようとすると、価格競争になってしまうのが現状です。そこで当社では、「どの店に行っても、何らかのルマンドがある」を目標に、チャネルやエリア、ターゲットに合わせ、技術力を駆使して、幅広い商品展開を実施しています。 

 その分、生産・販売管理など、効率を維持するためのハードルは高くなりますが、複雑なものをこなすことで他社との差別化、当社の優位性に繋がっています。

—— 2021年はブランドやカテゴリーごとに、特徴的な動きはありましたか。
吉田 健康訴求商品、中でも「プロテインバー」シリーズが好調です。健康志向ブームを背景に、味の評価が高いことがお客様の習慣化、継続化につながっていると分析しています。
 また、フレーバーではピスタチオに注目しています。「アルフォートミニチョコレートプレミアム ピスタチオ」に加え、22年には板チョコレートの「ラッシュ」シリーズにも投入予定です。ピスタチオは流行を超えるフレーバーとして22年以降も強化し、商品定着を目指して、取り組んでいきます。

—— 2021年3月の国産マスクの一般販売や、非接触型販売ツール「プチモール」の展開などを通じて、貴社の創業理念である「災害時に役立つ企業」としての取り組みがさらに加速しましたね。
吉田 災害時に役立つという意味では、菓子・水・食品に留まらず、何でもチャレンジする方針です。マスク事業の究極の目的は、「マスク不要の生活の実現」でもありますので、マスクの製造・販売のほかにも、今後食品の可能性を広げる産・学・官の共同研究などにも注力していきたいと考えています。
 「プチモール」についてはコロナ禍で変化した人流に対応した、商品構成・開発に取り組み、時代に即した販売形態を探っていきます。

—— 海外事業の状況はいかがですか。
吉田 コンテナ不足の影響で北米への輸出にブレーキがかかっていますが、コロナの抑え込みにいち早く展望が開けた中国での事業が、堅調に推移しています。創業80周年の際に掲げた「グローバル企業化」に向け、国内・海外の両事業での成長を目指していきます。

withマスク時代の成長戦略

—— 2022年はどのような方針で臨まれますか。
吉田 よくwithコロナと言われますが、私は生活者の習慣を軸に考えると、コロナ禍が落ち着いてもマスクは外せない「withマスク」時代が続くと見ています。自宅以外ではマスクをしたままの喫食を前提に、味・香り・食感を追求した商品の開発が急務となるでしょう。
 また、テレワークも継続していくでしょうから、食シーンの変化に合わせた商品作りにも取り組んでいきます。これだ、というものはまだ見つかっていませんが、若い社員の意見も取り入れながら、試行錯誤を続けていく方針です。

—— 原材料費・輸送費・人件費などの上昇による、経営環境を圧迫する要因も増えていますが。
吉田 これらの上昇分をお客様にご負担いただく部分も含め、価格面、仕様面など多角的に検討しています。そこには取引慣行の見直しも絡んでおり、カテゴリー、ブランドごとに作業を進めています。
 この他、プラスチック削減の社会的課題にも取り組む必要があります。確実な解決策はすぐには見つかりませんが、今後はこれまで以上に商品そのものの内容・価値が問われる時代になり、当社の強みである技術力と幅広い商品展開をさらに強化していく考えです。

—— 販売面ではいかがですか。
吉田 当社は地域密着をさらに強化し、地域ごとのニーズを把握しながら、各チャネルごとに取引の拡大に取り組んでいます。商品の多様さと合わせ、管理体制は複雑になりますが、現在は生産ラインから導入が進むAIを活用し、商品開発から販売までを網羅するシステム作りに注力していくことで、課題の解決を目指します。

—— 最後に2024年の創業100周年に向けた抱負をお聞かせください。
吉田 100年でひと区切りがつきますが、次の100年は1000年企業に向けた、第一歩だと捉えています。900年後の菓子業界はいまでは想像もできない進化を遂げているはずですが、日本はこれからも大災害に見舞われる可能性が大きく、そこに至る道程は決して平坦ではないと思います。
 現在も含め、難しい時代だからこそ、やりがいもある。「災害時に役立つ企業」の理念を実践すべく、何でもチャレンジ精神で進んでいく所存です。

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