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第5回
次々と新しい組み合わせを発見!
可能性広げる個性派フレーバーチップス2023.03.03(金)フードニュース

※本企画は「フードニュース」2月号にも掲載されています。

従来の“セオリー”に囚われず、お菓子とワインの新しい組み合わせを探っていく不定期連載企画、その5回目。今回はおつまみとしても人気の高いポテトチップスとワインのマリアージュを試してみた。市場のデータによると、昨年はばれいしょの原料不足が影響し、前年より「微減」となったポテトチップス類(山星屋調べ)。ワインとの組み合わせについては、予想外に好相性が多く、「お菓子と、わたし」(㈱山星屋)や「ぐるっぱ」(国分グループ本社㈱)の担当者も、口の中の化学変化で起こる味の広がりを楽しんだ。マリアージュ結果の提案方法や、飲食店への提案についてもアイデアが続出。定番から個性派まで幅広いフレーバーを揃え、改めて検証していくにしたがい、次々に想定外の発見が出てくる、充実した内容の座談会になった。

CRISPS MATRIX
(ポテトチップス分布マトリックス)

■お菓子とワインのマリアージュ選定委員会

Y(山星屋代表):「お菓子と、わたし」編集部 兼 ライター。日本ソムリエ協会(J.S.A.)ソムリエ

K(国分グループ本社代表):酒類全般&チェアリング愛好家。日本ソムリエ協会(J.S.A.)ソムリエ/SAKE DIPLOMA

F(フードニュース代表):弊誌編集部。ワイン&音楽愛好家。日本ソムリエ協会(J.S.A.)ワインエキスパート、J.S.A.ワイン検定ブロンズクラス・シルバークラス認定講師

■ポテトチップス
01.ポテトチップス うすしお味、02.ポテトチップスコンソメパンチ 03.堅あげポテトブラックペッパー 04.ピザポテト(以上、カルビー) 05.ポテトチップス のり塩味 06.ステイックカラムーチョホットチリ(以上、湖池屋) 07.チップスターSうすしお(ヤマザキビスケット) 08.プリングルズ サワークリームオニオン(日本ケロッグ) 09.ポテトチップスわさビーフ(山芳製菓) 10.JA紀南梅ぼし味ポテトチップス(モントワール)

今回、集められた10種のポテトチップス。定番の「塩味」や「のり塩味」から、個性的なフレーバーまで、幅広い味わいの商品が揃った

■ワイン
A アンドレ ロゼ バーガー主体(ロゼ・発砲)
アメリカ(カリフォルニア) アルコール度10.5%
ステンレス内での二次発酵により、繊細な泡立ちとアロマティックな香りが実現したスパークリング。イチゴやラズベリーのアロマにほのかな蜂蜜と洋ナシのニュアンスが絡み、ソフトな口当たりの、やや甘口に仕上がっている

B ドン・ロメロ カヴァ ブリュット チャレロ主体(白・発砲)
スペイン アルコール度11.5%
伝統的な瓶内二次発酵で造られるスパークリング(カヴァ)。クリア感のあるきめ細かい泡が特徴で、エレガントな口当たりながら、柑橘系のアロマがイキイキと広がり、余韻にはかすかなほろ苦さが。バランスのいい果実味とコクが、メリハリのある骨格を形成している

C ロシュ・マゼ ソーヴィニョン・ブラン(白)
フランス アルコール度12%
南仏らしい豊かな果実味と、ハーバルで爽やかなアロマのバランスが心地好く、フレッシュ感溢れる味わいが印象的。青リンゴなどのニュアンスが繊細に漂い、アフターの心地好さは特筆に値する

D KWV コンコルディア カベルネ・ソーヴィニョン主体(赤)
南アフリカ アルコール度13.5%
赤系果実のアロマにダークチョコやバニラのニュアンスが混じり合うフルボディ。コクのある果実味と溌剌とした酸味がバランスよく、穏やかな収斂性とメロウな口当たりが心地好い。“デイリーワイン”に最適な飲み飽きない仕上がり

E ライマット クラモール オーガニック ロゼ カベルネ・ソーヴィニョン主体(ロゼ)
スペイン アルコール度13%
淡く藤色がかったストロベリーピンクの外観。野イチゴやパパイヤのアロマが前面に出て、フレッシュな赤系果実の風味が口中に広がる、滑らかな味わいのオーガニックなヴィーガン対応ワイン

今回、ポテトチップスとのマリアージュを試した5本のワイン。左から、A アンドレ ロゼ(ロゼ・発砲)、B ドン・ロメロ カヴァ ブリュット(白・発砲)、C ロシュ・マゼ ソーヴィニョン・ブラン(白)、D KWV コンコルディア(赤)、E ライマット クラモール オーガニック ロゼ(ロゼ)

定番より個性派フレーバーと好相性?

“大穴系マリアージュ”を次々に発見
F 今回のテーマはポテトチップスとのマリアージュですが、最近はワインとポテトチップスの詰め合わせセットが販売されているシーンを見かけることもあり、にわかに注目されつつある組み合わせなのかなと感じています。
 用意したワインは、やや甘めのロゼと辛口な白のスパークリング、ドライな白と赤、加えて辛口ロゼの計5本と、バランスのいいラインアップ。甘めのワインが1本入っているので、マリアージュ選定委員会としては、組み合わせの幅が広がりそうで楽しみです。
 まずは、みなさんに試していただいた印象から伺いたいと思います。
Y ポテトチップスは初めてのマリアージュ体験だったのですが、とても合うなというのが第一印象です。違和感のある組み合わせがまったくなく、片手にチップス、片手にワイングラスを持って友人と一緒に食べたらワイワイ盛り上がりそうで、会話の邪魔にもならないので、みんなで食べたいと思いました。その中でも、すべてのワインと合うと感じたチップスは06「スティックカラムーチョホットチリ」で、改めて辛いフレーバーはお酒に合うと実感しました。
 意外性という観点では、まず09「ポテトチップスわさビーフ」。主張が強い商品ですが、ポテト自体に旨味が感じられ、フレーバーの余韻がとても長く、ワインとのバランスがいい。
もう1つは10「JA紀南梅ぼし味ポテトチップス」で、フレーバーが強いのですが、酸味がワインと好相性に感じられて驚きでした。
 今回の発見としては、「塩味」や「のり味」といった定番の味はもちろんですが、個性的な味のチップスの方がワインに合うことでした。
K そうですね。個人的には酸味のあるチップスとワインの組み合わせが心地好く、塩味の中にほのかな酸味が感じられる01「ポテトチップスうすしお
味」も含め、06、10との組み合わせが好印象でした。感覚としては、ピクルスを食べながらワインを楽しんでいるようで、甘酢とのマリアージュみたいでした。酸味との組み合わせとしては、レモンのように、もう少し酸っぱいフレーバーも合う気がします。また、04「ピザポテト」のトマトソース味も合っていて、酸味の感じられるおつまみが合うように思いました。
 事前の予想では塩味系の01、05「ポテトチップス のり塩味」、07「チップスターSうすしお」といった定番や、02「ポテトチップスコンソメパンチ」のようなシーズニング系が合うと考えていましたが、今回はそれ以外の、06や10のような、ワインと組み合わせるとき、あまり選択肢に入らないような、いわゆる“大穴系”のフレーバーが意外に合うことがわかったので、定番系のチップスと一緒にテーブルに載せるのもいいと思います。
F 私もお2人と同じように、01、05、07といった定番の味はきちんとまとまりあうことを確認しましたが、それ以上に個性的なフレーバーとの相性がいいことが意外でした。
 ワイン軸では、やや甘めのスパークリングロゼ(A)が、調味料系の08「プリングルズ サワークリームオニオン」を筆頭に、どのチップスとも相性よく、味を包み込んでまとめてくれる感覚がありました。また、泡がチップスの脂っこさを洗ってくれるので、飽きずに食べ続けられました。特に10との組み合わせは絶品でしたが、全体としては(A)~(E)まで、すべてのワインがおいしいと感じられ、同時にチップスの個性も引き立ち、フレーバーの邪魔をしないところが素晴らしかった。

キーワードは「調味料系」「料理系」

カウンターでのマリアージュも◎

F この結果の提案としてのアイデアは何かありますでしょうか。
Y 今回のマリアージュに関しては2つのアプローチがあると思っていて、
1つは芋自体がおいしく香りが控えめな01、05、07などの“定番商品”。もう1つは09のようなフレーバーが強いもの。
 前者はワインバーのようなアルコールが中心の空間で、ワインの味を引き立たせたいタイミングで一緒に出すといいのではないかと。後者は、あまり難しいことは考えず、みんなでカジュアルに楽しむシーンに合うと思います。
K ワイワイ楽しみたい場面なのか、それともゆっくり会話を楽しみたい場面なのかによって変えるという考え方もありますね。
F 現状では、ポテトチップスとワインの距離は、まだ遠いように感じますが、ワインを軸にして提案する方法もあるし、気の置けない仲間とワイワイ……といったシチュエーションで提案していくアプローチもありそうですね。
Y それから、合わせたときの「味」を、もっと具体的に伝えられたらいいのではないかと思います。
K 確かにワインの味を表現するとき「酸が」とか「キレが」と、抽象的で一般の人にはわかりづらい部分があるので、チップスと合わせたときに「マヨネーズの味」とか「ピザソースの味」といったような、具体的な表現で伝える工夫をする必要がありそうですね。
Y 今回、白のスパークリング(B)や赤の(D)と03「堅あげポテトブラックペッパー」を合わせたときにマヨネーズのような味わいを感じたのですが、例えば「このチップスとこのワインを合わせたら、こんな料理を食べている感覚になる」といったような提案ができれば選びやすくなるかもしれません。ほかのカテゴリーのお菓子より、チップスは「ブラックペッパー」とか「コンソメ」といった調味料やシーズニングの味が多いので、料理を連想させるヒントがあるとイメージが湧きやすくなると思います。
F 02「ポテトチップスコンソメパンチ」のようなシーズニング系、03,06,09のような調味料系やスパイス系フレーバーのチップスとワインの組み合わせに出会ったら、そこから料理の方に意識が繋がっていくこともあると思うので、飲食の現場では新しい提案の可能性が広がっていきそうですね。
Y そういう意味では、ワインとポテトチップスの組み合わせを、マトリックス表に整理して伝える方法もあるかもしれません。
K それから、バルなどで定番系以外のポテトチップスを出してくれると、新たな食べ合わせが体験できるので、ぜひやってもらいたいですね。
F 確かに、のり味や塩味の「定番系」、ペッパーやチリなどの「調味料系」、ピザやコンソメといった「料理系」フレーバーなどのチップス3種類くらいを1つのメニューとして提供してもらえると、ワインバルのカウンターでも“マリアージュ企画”が実践できますね。
 今回は調味料系や料理系といった、個性的で強いフレーバーのポテトチップスとワインが素晴らしいマリアージュになることがわかりました。毎回、予想以上に新しい組み合わせと出会えるので、次回もとても楽しみです。

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