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【新春トップインタビュー】㈱ブルボン 代表取締役社長 吉田 康氏2023.01.26(木)フードニュース

※本企画は「フードニュース2023年新年号」でも掲載しています。

100周年に向け、未来志向の施策続々
多彩なブランド健在、営業施策も充実

―― 貴社では未来を見据えたさまざまな施策を展開されていますが、昨年はメタバースによるコミュニティ空間も登場しました。
吉田 10月に期間限定で「ブルボンメタバース」という仮想空間を公開しました。お客様がアバターとして当社商品にまつわるクイズに答えたり、他のお客様との交流も可能なコミュニティ空間として好評をいただきました。今後は他業種との連携も視野に入れながら、リアルとバーチャルで利用可能な菓子の販売など、いま想像できる未来を超える未来を、走りながら創っていきたいと考えています。


―― こうした進化する技術に彩られた2022年を、どのように振り返られますか。
吉田 デジタルを始めとするさまざまな技術が進化していく中で、21世紀の本格的な変化が始まった1年だと捉えています。菓子販売においてはDgSが伸長し、カテゴリーによってはSMに次ぐ販売金額を記録するなど、流通が大きく変化していくうねりを感じています。
 当社でも紀ノ国屋様との自動販売機のコラボとして「ブルボンプチモール紀ノ国屋専用自販機」を設置したり、キャラクターをデザインした「プチクマコンテナ」の運用を開始し、鉄道輸送による環境負荷低減に一層取り組むなど、変化に対応した流通のあり方を追求してきました。


―― 2023年3月期・上半期の実績はいかがでしたか。
吉田 メーカーのみならず、卸業様、小売業様にもさまざまなコスト圧力がかかる中、当社ではコスト上昇分を吸収すべく価格改定を実施しました。その影響から伸び悩んだ商品群があり、売上高は前年比で若干のマイナスとなりました。
 ただ、物価高の状況下でも、お客様に手にとっていただくためには、その商品の価値をていねいに伝えていくことが大事になると考えています。
 昨年後半より、秋らしい気候が長続きしたことに加え、国内の人流増加、インバウンドの復活など好材料も増えてきましたので、新しい食の楽しみ方を提案しながら、下期の売上増に取り組んでおります。


多彩なブランドが持ち味発揮

―― ブランドごとの動向として、ビスケットカテゴリーでは健康志向商品に注力されました。
吉田 健康志向ビスケットは「カーボバランス」「80kcalシリーズ」「MCTプラス」の3本柱で展開しています。市場は今は大きくないものの、今後成長が期待でき、強化すべき分野だと捉えています。効果的な棚割り提案による売場作りと、「糖質60%off」や機能性表示食品であることなどのメリットをわかりやすく伝えるパッケージで、消費者との接点を高めていきます。


―― ロングセラーブランドの「ルマンド」「アルフォート」はいかがですか。
吉田 「ルマンド」は当社創業50周年の記念商品で、発売以来約50年に渡り、身近なハイグレード菓子として成長を続けてきました。今年もブランド展開として「贅沢ルマンド」「ひとくちルマンド」に新製品を投入して品揃え強化を図っています。
「アルフォート」は高橋一生さんを起用したTVCMが効果を上げており、「アルフォートミニチョコレートストロベリー」が好調なほか、秋冬季の新商品として人気フレーバーを投入した「贅沢ナッツのアルフォートミニチョコレートピスタチオ」「同 ヘーゼルナッツ」にも期待しています。
 ロングセラーブランドでは、三角形ケーキの「シルベーヌ」が40周年を迎えました。新製品「同 ホワイトミルク」の発売に合わせキャンペーンを実施したほか、カプセル自販機で「シルベーヌ」を含む当社商品のミニチュアマスコットを販売したことにより、ブランド認知向上に繋がりました。


―― 出川哲朗さんが「プチクマ」に扮した、プチシリーズのTVCMが話題になっていますね。
吉田 プチシリーズは一昨年大きく伸長しましたが、昨年、商品の切り替えの際にその反動が出る形になりました。そこで価格面の優位性や、大人から子どもまで幅広くご愛顧いただく豊富な商品数という強みを活かし、棚を活性化していく戦略を展開し、効果を上げてきています。サイズも値段も量も“ちょうどいいよ!”をTVCMで訴求しながら、今年の成長に繋げていきたいと考えています。
 このほか、成長市場であるグミカテゴリーは、当社でも「フェットチーネグミ」「しゃりもにグミ」が堅調に推移しています。ただ、商品数も多く、競争も激しくなっていますので、グミ売場内での場所の取り合いではなく、例えばSMのレジ前など、新たな売場を作る取り組みを強化し、商品との接触機会を増やしていく方針です。


100周年に向け、国際的ヒット商品育成

―― 昨年は女性購買層を起点とした売場提案にも取り組まれました。
吉田 従来より女性購買層の消費行動を分析しながら商品開発や販売施策を進めてきましたが、昨年は特にその購買スタイルの変化に対応した、わかりやすく、買いやすい商品展開と売場提案に注力しました。いわゆるコスパやタイパも意識しながら、女性ならではの“ちょうどいい量”や健康・栄養に配慮した商品について、当社のこだわりをわかりやすく伝えることが大切だと考えています。


―― 販売面における地域密着、また海外展開の現状についてお聞かせください。
吉田 当社の強みである全国での営業活動を展開する中で、その地元の食材を使った限定商品を開発するなど、地域密着を進めてまいります。
 海外展開については、中国に続く地域として東南アジアに注目し、ビスケットやスナックを中心に日本国内での生産能力を上げながら、輸出に注力していきます。


―― 最後に2023年の貴社の成長戦略についてお聞かせください。
吉田 既存品の作り直しに留まらない新しい価値を持った商品、国際的にヒットする商品を開発することを目標としています。昨年11月末に発売した「雪室ショコラ」(熟成カカオ73、まろみミルク)2品は、当社魚沼工場の雪室設備で熟成したカカオ豆を使用した、雪国だからこそ作ることができるチョコレートです。味わいの面での高い評価をいただいており、じっくりと育てていく方針です。
 また、2024年に創業100周年を迎えるにあたり、今年はプレ100周年の位置づけで、100周年に向けたブランドの強化、企業認知の向上を推進します。「災害時にお役に立つ企業」という創業の原点を堅持し、未来を見据えた社会課題の解決に尽力しながら、企業活動に邁進していく所存です。

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