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【2026年新春トップインタビュー】㈱不二家 代表取締役社長 河村宣行氏2026.01.26(月)フードニュース

設備投資奏功し、大袋菓子で収益基盤
コスト高局面でも、前進する不二家の挑戦

――  貴社の2025年12月期第3四半期(1月~9月)の実績と、2025年の振り返りについてお聞かせください。

河村 第3四半期までの売上高は839億6800万円(対前年同期比108.5%)となりました。営業利益は10億6900万円(同138.1%)、経常利益は18億9800万円(同16.5%)、四半期純利益は9億700万円(同135.7%)と、数字の上では「よく頑張っている」といえる水準に達しています。

 とはいえ、内実は厳しいものです。当社は「ルック」や「ハートシリーズ」などのチョコレートカテゴリーはもちろん、「カントリーマアムチョコまみれ」などビスケットカテゴリーの商品にもチョコレートを大量に使用しているため、カカオ豆価格の高騰による影響を強く受けています。また、卵も想定以上の高値で高止まりして、洋菓子事業に大きな影響が出ています。  

 第4四半期は最高価格で仕入れたカカオを使用する時期となり、ここまでの好調が継続するのは難しいと考えています。通期の業績予想を達成することを目指し、ここからが踏ん張りどころという感覚で臨んでいます。

―― 好調なカテゴリー・形態を教えてください。

河村 「カントリーマアム」や「ホームパイ」、「ピーナッツチョコレート」、「アーモンドチョコレート」などの大袋の伸長が目立ちます。この分野では「少し過剰では」といわれるくらい設備投資を重ねてきましたが、その積み重ねにより、省人化・省力化が進み、生産効率の高さを実現することで、売れ筋商品も欠品なく供給できています。この形態が牽引してくれることで、原材料高や人件費・物流費のコストアップを吸収する大きな力になっています。

―― 洋菓子事業では、積極的なテコ入れをされましたが、その狙いと成果についてお聞かせください。

河村 ケーキはどうしても節約の対象になりやすく、黙って並べているだけでは売上が落ちてしまいます。そこで、一昨年に続いて昨年も、4月には「プレミアムショートケーキ」、9月には「マロンモンブラン」の半額キャンペーンを3日間限定で実施しました。多くのお客様にお試しいただき、通常価格に戻した後も来店やリピート購入につながっています。

   また、昨年で3年目となる8月22日の「裏不二家の日」(※1)の取り組みでは、夏場のケーキ需要を新たに開拓したほか、新業態となるドーナツ店「ペコちゃんmilkyドーナツ」の店舗数が大きく拡大し、ドーナツというケーキ以上の利幅の多いアイテムでの事業化が加速しています。

※1 本来の「不二家の日」は2月28日

―― クリスマス商戦について教えてください。

河村 「Smile Switch クリスマス(ホワイト/ショコラ)」は、10月1日の予約開始から、予想を大きく上回るご予約をいただきました。予約のためのご来店時には、他の商品も一緒にお買い上げいただくなど、店舗全体の売上にも大きく寄与しました。「Smile Switch クリスマス」の製造には手作業も多く、他部署のメンバーも工場に入って製造を手伝うなど、全社一丸となった生産体制で対応しております。

―― 洋菓子事業の今後の重点施策をお聞かせください。

河村 洋菓子店としてのこだわりは堅持しつつ、原材料とアイテム数の削減に取り組み、コスト高対策と生産効率化を推進いたします。また、アメリカのコストコ向けの冷凍ケーキも堅調に推移しており、新しい収益源として育ちつつあります。今後は洋菓子店を軸としながら、新業態店舗、輸出事業、自動販売機といった分野を洋菓子事業の柱となるよう注力する方針です。

―― 製菓事業では昨年、「チョコまみれミドルパック」が5周年、「ハートシリーズ」が90周年を迎えましたね。

河村 新ブランドをゼロから立ち上げるのは、難しい時代です。「チョコまみれワールド」の軸となる「カントリーマアムチョコまみれ」「ホームパイチョコだらけ」は、ともに既存ブランドの力を借りながら育成するのが現実的という判断のもと展開してきました。「チョコまみれ」「チョコだらけ」は、私の世代からすると大丈夫かな、とちょっと心配になるようなネーミングでしたが、若い担当者が考えた企画に口出しせずに任せた結果、想像以上のヒットになりました。

 現在では季節商品、スピンオフ商品で話題を喚起しつつ、昨年は「チビまみれ」「チビだらけ」というひと口サイズも発売し、形態も多彩になるなど、新たなロングセラーを目指し攻勢をかける方針です。

 「ハートシリーズ」は90周年記念商品として初のビスケット商品を発売し、横展開に注力しました。今年は定番ラインを順次拡充するなど、好調な売上に拍車をかけたいと考えています。

―― 各社とも好調なグミや海外事業についてはいかがでしょうか。

河村 まずグミですが、「アンパンマン」などキャラクターグミに加え、新食感の「ネクター果実食感グミ(あんぽ柿)」などの好調を受け、神戸工場にグミラインを新設しました。今年2月から稼働予定で、グミ市場のさらなる拡大に貢献したいですね。

 海外事業については、中国は経済減速の影響でここ2〜3年厳しい状況が続いていますが、日本での営業経験豊かな社員を派遣して立て直しに取り組んでいます。また、ハラル対応のベトナム新工場が昨年11月より生産を開始し、同国内及びASEAN諸国への輸出拠点として育てていく計画です。

―― 富士裾野工場での天然水事業もスタートしましたが、狙いをお聞かせください。

河村 当社の水事業への長年の夢がようやく形になりました。同工場の敷地内に、「ホームパイ」の仕込み水を活用した、天然水専用の工場を新設しました。  

 基本的にはOEMが中心ですが、裾野市と協定を結び、災害時にはお菓子だけでなく水も供給できる体制を整えています。能登半島地震の際にも痛感しましたが、被災地で最初に必要とされるのは水です。事業としての採算をとりつつ、社会貢献にもつながる取り組みとして、社員一同大きな誇りを感じています。

―― 最後に今年の展望を漢字一文字で表し、その想いをお聞かせください。

河村 原材料や人件費、物流費などあらゆるコストが上昇し、消費者の節約志向も強まるなか、何もしなければ真っ先に削られてしまうのがお菓子への支出です。

 一方でお菓子は、主食のように「1日3回で終わり」ではなく、提案次第で需要が広がる余地があります。だからこそ、価格競争ではなく、各社が知恵を出し、その工夫の仕方で競い合うことが大切だと考えています。

 当社では商品開発の最前線を若い世代に任せ、経営陣は設備投資など大きな意思決定に専念する体制づくりを進めてきました。その仕組みが成果を挙げている今、2026年を表す漢字は「進」としたいと思います。価格改定も設備投資もひと通りやり切り、ここからは前に進むことだけを考えていく段階です。お客様に喜んでいただける商品づくりを通じて、お菓子の楽しさをさらに広げてまいります。

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