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【新春トップインタビュー】 江崎グリコ㈱ 代表取締役会長 江崎勝久 氏2026.01.26(月)フードニュース

※本企画は「フードニュース2026年新年号」にも掲載しています。

菓子の「日常必需品」への進化目指す
新中計で価値創造加速、次のステージへ

―― 2025年も変化の多い1年となりましたね。

江崎 昨年を振り返りますと、自民・維新による連立少数与党体制のもと、新たに発足した高市早苗政権が、積極財政や物価対策を軸に、経済・食料安全保障を強化する方針を示しました。国際的には日中関係の緊張が一段と高まり、米国ではトランプ政権による関税政策が世界経済に与える影響に、予断を許さない状況が続きました。  

 当社グループは、「すこやかな毎日、ゆたかな人生」という存在意義(パーパス)のもと、「おいしさと健康」の価値を体現する商品を通じ、生活者の皆様に日々の習慣としてご愛用いただける「日常必需品」へと進化させることにより、中長期の事業成長を目指してきました。

―― 大阪・関西万博での出展も話題になりましたね。

江崎 当社では研究開発分野において、ネムノキ由来成分による老化細胞の除去に関する特許を取得するとともに、大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンに協賛企業として参画し、自社ブース「細胞ケア研究所」を出展いたしました。健康寿命の延伸に向けて、「細胞ケア」に関する知見を国内外に向けて発信しました。 

 「細胞ケア研究所」は万博終了後も、当社サイト内でWeb-VRを使用したデジタルでの視聴体験を提供おり、研究開発分野での成果の社会実装に向け、取り組みを推進しております。

 また、小山薫堂氏プロデュースによるシグネチャーパビリオン「EARTH MART」では、当社が開発した「お米のキャラメル」を展示・配布しました。未来に向けた当社の研究開発と、お米という日本の食文化の可能性を、広く知っていただく機会となりました。

―― 貴社の2025年12月期の動向はいかがでしょうか。

江崎 2025年12月期第3四半期の売上高は2647億円(対前年同期比109.8%)、営業利益は90億円(同71.2%)で推移しています。

 2025年12月期通期は、システム障害による出荷停止でチルド商品全般が減販した前期に比べて増収となる一方、アイスクリーム等の不振によって減益となる見込みです。

 ここ数年来、原材料価格の上昇と供給量の減少が長期化する中、商品の価値向上を伴う値上げを複数回実施しました。 

 こうした現状では、嗜好品である菓子においては、消費者の購入意欲をかきたてる新しい価値の創造が急務となっています。最近ではDXやAIの活用が加速していますが、さまざまなデータから新しい価値を生むのは個人の力であり、その点でも課題が残る1年だったといえます。

―― 昨年は新中期経営計画がスタートしましたが、初年度として注力した取り組みをお聞かせください。

江崎  2025年は中期経営計画の初年度として、価値創造に向けた取り組みを本格的に推進しました。その象徴的な取り組みとして、当社が保有する約1万株の菌株の中から選定した「つよさうみだすGCL1815乳酸菌」を新たに加え、従来の「生きて腸に届くスポロ乳酸菌」とともに、2種類の乳酸菌を配合した「ビスコ」をリニューアル発売いたしました。長年にわたり親しまれてきたブランドに新たな価値を加えることで、生活者との接点をさらに広げることができたと考えております。

  また、発売60年目を迎えた主力商品「ポッキーチョコレート」「ポッキー極細」を10年ぶりに全面リニューアルしました。素材の見直しと味わいの向上により、世代を超えて愛される商品として、存在感を一層高めることに注力いたしました。

―― 「加速フェーズ」と位置づける新中計においては、「価値創造による利益創出を加速」することを掲げていますが、実現に向けてはどんなことが鍵になってくるでしょうか。

江崎 新しい価値創造による利益創出は幾多の産みの苦しみを経て、実現するものだと考えます。創業者・江崎利一は「グリコ」を世に送り出すまでの数年間、試行錯誤を重ねながら粘り強く挑み続けました。そこには強い精神力が必要だったはずです。

 いまの当社の社員においては、年齢や経験に関わらず、新しいものを作るという意欲を全面に押し出し、前向きに取り組んでいくことが、突破口になると期待しています。

―― 事業戦略の柱の一つとなっている、海外事業の動向はいかがですか。

江崎 海外事業はASEAN諸国および中国市場を中心に、菓子・健康食品の展開を着実に加速してまいりました。2025年12月期第3四半期までの売上高は648億円(同110.1%)、営業利益は72億円(同108.5%)と伸長していますが、地域ごとの浸透度や人口に対する売上の面で、まだまだ伸びしろがあると考えています。ブランドとしては「ポッキー」を筆頭に、「ビスコ」と「アーモンド効果」の認知度と売上の向上に注力していく方針です。

 今後も現地市場において、「おいしさと健康」の価値を創造し、地域のニーズに即した商品展開を推進しながら、ブランド認知の向上と販路拡大を図ってまいります。

―― 今年の抱負をお聞かせください。

江崎 昨年よりいい年にしたい、常に成長し続けたいと考えています。当社では幾多の困難を乗り越えた創業者・江崎利一の行動や考え方を、「七訓」として受け継いでいます。その中でも特に今年は、「創意工夫」を凝らして「積極果敢」に日々の業務に取り組み、新しい価値の創造という困難な仕事に、正面から粘り強く挑んで欲しいと願っています。

 そして、生活者の期待に応える商品・サービスの提供を通じて、「すこやかな毎日、ゆたかな人生」に貢献していきます。事業環境の変化の激しい時代にあっても、「共同一致」で力を結集し、「不屈邁進」してまいります。

―― 最後に江崎会長が今年の展望を漢字一文字で表すとしたら、どんな字になるでしょうか。その言葉に込める想いをお聞かせください。

江崎 「創」です。最初にも申し上げましたが、これからの菓子事業では、嗜好品でありながらも毎日の習慣として喫食していただける「日常必需品」としての進化が求められます。「栄養菓子」のロングセラーとして、長年にわたってお客様の健康づくりに貢献してきた「ビスコ」は、リニューアルにより日常での喫食習慣化の訴求力を高めました。

 今後はこうした商品の開発を、お客様の継続的な購入によって成立する「新しい事業の開発」につなげていくことが重要です。

 原材料価格や人件費等のコスト上昇、節約志向の高まり、業界内の競争激化など、困難の多い時代だからこそ、楽しみながら「創意工夫」に取り組むことを社内に呼びかけ、当社としての活力を発揮する1年にしたいと考えております。  

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