誌上&web連動企画公開中! 新製品&戦略/春日井製菓2021.08.30(月)
ロングセラー品資産にキャンディ需要活性へ ユーザーとの距離縮める施策続々
※本企画は「フードニュース8月号」にも掲載しています。
春日井製菓㈱(本社名古屋 春日井大介社長)は今秋、「いまだかつてない」内容の新製品、SNSキャンペーンにより、キャンディやラムネの市場に新風を吹き込む勢いだ。
「スナックかすがい」「おかしなくらい、おかし好き。」といった、イベントや新メディアによる発信など、ユーザーと至近でコミュニケーションを図る取り組みで同社を牽引する、春日井製菓販売㈱ マーケティング部長・原 智彦氏に話を聞いた。
生クリーム41%配合のキャンディ。常識を超えた「女王のミルク」
同社のミルクキャンディでは、1984年に独創的なネーミングと、当時ほぼ皆無だったピロー包装のキャンディとして大ヒットした「ミルクの国」が、アイコン的商品として知られるが、37年を経た今秋、同社の技術力を結集した新製品「女王のミルク」が登場する。北海道産生クリームという原材料へのこだわりを、限界まで追求して製品化した、「前代未聞」のキャンディといえよう。
「女王のミルク」の原材料表示。「生クリーム(国内製造)」が一番目に表示。生クリームは北海道産を使用 「女王のミルク」(9月1日発売)は、純度の高い生クリーム味が堪能できる
パッケージ裏面の「原材料名」を見ると、一番目に表示されているのは、砂糖でも水あめでもなく「生クリーム(国内製造)」。しかもその配合率は41%(「ミルクの国」の11倍)にのぼる。製造過程では濃度の高い生クリームを煮詰める際に、「焦げ」という大きな壁が立ちはだかったが、同商品の開発を手掛けた「チャレンジチーム」は、度重なる試行錯誤と技術改善により、この課題をクリアしたという。
「通常新製品のテストは2~3回ほどですが、同商品は20回以上もテストするほど苦労を極めましたが、『一度でいいから、思いどおりの材料を使って、思いどおりの味を作り、おいしいと言ってもらいたい』という商品開発担当者の夢を実現することができました」(原氏)
この「たった一度でいいから」という思いは、同商品特設サイト内での「開発者物語」でムービー化されている他、「#たった一度でいいから」をテーマに、Twitter上で叶えたい夢の投稿キ ャンペーンを実施するなど、同商品プロモーションの核となるキーフレーズになっている。
「長く続くコロナ禍で、日常生活でも様々な我慢を続けている人が多い今、夢を語ることも憚られるこの空気をほんの少しでも変えたいと考えました。私たちがそうだったように、胸の奥に秘めている渇望や夢がある人は多いはず。まずはそれを口に出してみようよ、という空気をつくりたかったんです」
この趣旨に共感・賛同したインフルエンサーは、単なるPR投稿だけでなく、選ばれた5名の夢を叶えるためのサポートまでを行うという。例えば富士山に一緒に登りたいという夢なら一緒に登るなど、実現まで伴走するというユニークな試みだ。
一見、新商品の販促とは接点が少ないように見えるが、ブランドへの共感や社会性を重視しているという。webサイトやSNSへのユーザーの接触頻度を上げ、マインドシェアを高めるという意味で、「#たった一度でいいから」の投稿キャンペーンは、「叶えたい夢」から生まれた新製品の販促として、高い親和性と実効性を発揮することが期待できそうだ。
「#たった一度でいいから」SNS投稿キャンペーンでは、メーカーの思いとユーザーの思いを繋げながら、商品訴求を行っていく(投稿受付は終了している)
新規ユーザー獲得を狙い、「黒あめ」の好評キャンペーン第2弾
1980年以来、「直火炊き製法」による品質の高さで、ロングセラー品として君臨する「黒あめ」
ロングセラーとして安定した売上をキープし続けてきた「黒あめ」。昨年発売40周年を迎え、「第1回 黒あめバトンキャンペーン」を実施し、新規ユーザーの獲得に向けた継続的な取り組みをスタートさせた。
同キャンペーンは「深くてやさしいエピソード」を一般ユーザーから募集し、特賞に選ばれた4作品を、絵本作家の監修のもと絵本化するというもの。予想を大きく超える1407篇もの作品が寄せられ、また、10代〜30代の応募が約半数を占めるなど、若年層を中心とした新規ユーザー獲得への光明が見えてきたという。
今年は同じテーマを継続し、さらに訴求力を高めたコンテンツを用意して臨む。具体的には1回目のキャンペーンで作品化した絵本4作を、登坂淳一さん(元NHKアナウンサー)、赤江珠緒さん(TBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』パーソナリティー)、石川由依さん(声優。『進撃の巨人』ミカサ・アッカーマン役など)、岡本信彦さん(声優。『鬼滅の刃』不死川玄弥役など)の4名の声のプロが朗読する動画を、「YouTube」配信してキャンペーン認知度を高める。また、今年はweb応募に加え、封書での応募も受け付け、幅広い年代層が参加しやすい環境を用意した。
「黒あめは、若い人たちにとって“自分には関係ない”と思われていました。でも多くの人の中に『おじいちゃん・おばあちゃんが好きだった飴』として記憶されており、舐めると、『こんなにおいしかったんだ』と驚く人が多いんです。パッケージも一周回ってエモい、と。だから、お客様が“自分にも関係あった”と思い出してもらえる取り組みを進めています。ブランドとは、記憶と期待の融合体。多くの人の記憶の中にあるロングセラー商品をたくさん持っている当社の強みを生かしたキャンペーンで、新しいユーザーを増やしていきます」
「五感で楽しむ要素」の増強を筆頭に「ラムネいろいろ」リニューアル
「ラムネいろいろ」の新パッケージは3種類。ブランドサイトも開設し、製品特性やキャンペーン認知度の向上を狙う
口の中でスッと溶ける湿式製法により、のどに詰まる可能性の低い幼児向けのお菓子として、パパ・ママ層から安心チョイスされている1979年生まれの「ラムネいろいろ」。この9月には「五感で楽しむ!」をパッケージに大きく打ち出し、食感の異なる乾式ラムネの復活や、6種に増えたフレーバー展開で、味覚はもとより、視覚、触覚などの五感を育む要素を、ラムネ本体、包み紙、パッケージに盛り込んでリニューアルする。
「たっぷり入って安い、という当社が得意としてきた領域は、既にPBに取って代わられて久しい。楽しみ方も含めた新しい価値を打ち出さなくては生き残れません」。そんな強い危機感から、ラムネの商品づくりに現役ママを抜擢。自分の子どもに食べさせたいか、という厳しい目線で商品リニューアルが進められた。さらに、「五感で楽しむ」というコンセプトを体験できるよう、幼児の親に関心が高い絵本に着目。絵本ナビ社に企画を持ち込み、人気絵本作家や現役のママたちと、子どもの五感を育む「ラムネ付き絵本」をゼロから開発し、今年の11月下旬から発売予定だという。
「ラムネいろいろ」のプロジェクトでは、絵本制作にも参加。
「93年の歴史の中で食べられない商品を作るのはこれが初めて。作って終わりではなく、ブランドは育てていくものという概念が、少しずつ浸透してきつつある」の言葉の通り、ラムネの製造ラインを増強移設した相生工場(兵庫)では、工場長と女性社員が地元の幼稚園を訪れ、30名以上の園児と一緒にラムネで遊ぶイベントを行い、大好評を博したという。
昨年9月から始動した4代目大介社長の体制下で、様々な「新しい挑戦」を加速させている春日井製菓。経営理念の中の「愛され続けるお菓子作り」を、これからどのように推し進めていくのか、引き続き注目していきたい。