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【米菓メーカー・新社長インタビュー】亀田製菓㈱ 代表取締役社長 COO 髙木政紀 氏2022.08.25(木)フードニュース

※本企画は「フードニュース8月号」でも掲載しています。

新社長就任、価値提供し米菓市場の伸長へ

―― 6月14日に役員体制を一新し、社長に就任されました。社長就任の抱負についてお聞かせください。
髙木 激しい環境変化に対応するとともに、先見性を持って将来へとチャレンジしていくことが重要です。そういった意味では当社は、中期経営計画において、2030年度に製菓業から“Better For You の食品業”へと進化することを目指しており、大きな方向性とビジョンはすでに定まっています。
「米菓」と「食品」、「日本」と「海外」といった軸をかけ合わせた4象限の事業で「生活者に喜びと潤いをお届けする」ことを実現し、社会に貢献していくことが私たちの使命であると考えています。
 ここ十数年で会社規模も拡大し、グループ全体の従業員数も増えています。こうした 中、グループ全体で5000人以上となる従業員の一人一人が、会社のビジョンと自分自身が行っている仕事との意味づけと紐づけをしてもらうことが大切です。
 一人一人が会社をよりよく成長、発展させようと使命感を持って働けるよう、私がそこをつなぐ役割を担い、従業員が一歩踏み出せる環境をしっかり作っていきたいと考えています。


―― 2030年に向けた米菓事業の今後の方向性についてお聞かせください。
髙木 収益の柱である国内米菓事業を縮小均衡で進むというつもりは全くありません。むしろ、成熟しているように見える米菓市場ですが、まだまだ伸びる余地はあると考えています。
 昨年1年間、営業本部長を務めていた中で取引先様・お客様の反応を見ると、おいしさだけでなく、ストーリー性があり、お客様に新しいワクワクする価値を提供することへのニーズを実感しました。
 こうした要請に応え、しっかりと生産体制を構築して供給量を増やすことができれば、市場が拡大する可能性は大いにあると思います。


―― 今年度(2023年3月期)の取り組みについてお教えください。
髙木 付加価値のある商品の展開に向けて準備していましたが、2月の同業他社様の事故を受け、主力ブランドの定番品を中心に増産要請に応えてきました。
 米菓市場の25%程のシェアを占めていた穴を埋めるべく、他社企業様と協力し、その1/2程度を供給することができ、このうち半分ほどを当社で供給し、市場規模を守ることに尽力してきました。
 4~6月期決算(連結)は前年同期比で売上高117.9%(営業利益202.9%)と伸長しましたが、増産要請へ注力していたため、第2四半期は新たな商品提案ができず、かつ猛暑の影響等もあり、難しい局面となりそうです。下半期は新商品の発売をはじめ、付加価値のある商品展開を進めていきたいと考えています。


新たな柱となるブランドを育成


―― 今年度下半期、今後の米菓事業の展開について教えてください。
髙木 年間売上が100億円規模の主力ブランド「亀田の柿の種」、「ハッピーターン」に続く第三、第四の柱を築いていきたいと考えています。
 コロナ禍において「つまみ種」ブランドが大きく伸長し、この春に1.4倍近いラインの増強も行いました。これまで10種入りの定番商品、また季節商品を展開してきましたが、この秋には新たな軸となる第二の定番商品を発売する予定です。
 また2021年2月に発売した「無限エビ」も好調に推移しており、若年層の方々にも多く手にとってもらえている商品となっています。下半期~春季にかけて、さらなる成長に向けブラッシュアップしていくとともに、シリーズ化に向けた検討を進めてまいります。


―― 海外事業、食品事業の施策についてお聞かせください。
髙木 食品事業については今年3月に、米粉パンの「Happy Bakery」、プラントベースドフードの「JOY GREEN」、乳酸菌の「RiceBIO」の3つの新ブランドを立ち上げ、グループ会社の㈱タイナイと㈱マイセンとともに事業を展開しています。
 米粉パンについては、ニーズがともても高く、健康価値の高さと当社の加工技術力を訴求し、増強を図っていきます。
 このほか、グループ会社の尾西食品㈱のアルファ米を使用した長期保存食が伸長しています。防災食としての用途だけでなく、簡便性とカレー等といった豊富なバリエーションと味わいが受け入れられ、アウトドアや旅行での喫食が増えており、今後、販路拡大を図っていきたいと考えています。
 海外事業については、引き続き北米市場に注力するとともに、アジア市場を中心にクロスボーダー取引(国際間取引)を拡大させ、「人と商品」の流動性、連携性を高めていく所存です。
 ジュネジャ・レカ・ラジュ会長が海外と食品、私が国内米菓を主に見ることとなりますが、オーバーラップしながら経営を進めてまいります。


―― 最後に経営にあたっての理念をお教えください。
髙木 私は創業地の近所で生まれ育ち、幼少より米菓のリーディングカンパニーとなった亀田製菓を誇らしく思っておりました。小学校の文集で「亀田製菓に入る」と書いていたほどです。
 今後、100年、200年と事業を継承していくため、当社の価値を高め続けることが重要であり、そのためにも、当社の宝である有能な社員の力を最大限発揮できる環境を整え、将来への道筋を作っていきたいと考えています。

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