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9月号トップインタビュー・有楽製菓株式会社 代表取締役社長 河合辰信 氏2021.09.28(火)

『自由なバレンタイン』に『サステナブル』
先導する役割「ブラックサンダーが担う」

—— まずは、2021 年 7 月期の実績についてお聞かせいただけますか。

河合 増収増益で終えることができました。増収の要因としては、コロナ禍の中で大袋商品の需要が伸びたことと、新商品が好調に推移したことが挙げられます。新商品はおいしさをとことん追求した商品を展開し、特に個装形態で 50 円上代のプレミアムラインが好評でした。観光みやげ商品は厳しい状況が続いていますが、その分をカバーし、好実績につなげました。


—— 今年のバレンタインは、貴社の大胆な方針転換が話題でした。


河合 昨今、義理チョコのみならずバレンタイン自体に否定的な意見が目立つようになってきたと感じ、今年は、これまでの常識を取り払って「VD をもっと自由に」楽しんでほしいという思いで様々な企画(下駄箱を売るなど)を考えました。想像以上の好意的な反響があり、やはり VD を楽しみたいと思っている人が多いのだと確信しました。現状の VD は日本独自の進化を遂げた文化ですが、難しく考えず年に一度のお祭りとして楽しめばいいと思います。楽しさを先頭に立って広めていくことが、当社の役割だと思っています。

—— コロナ禍のチョコレート市場をどのようにご覧になっていますか。

河合 コロナ禍は本来起こるはずだった変化を加速させましたが、特に感じた変化は価格の二極化です。経済的不安により安価な商品が求められる一方、高価格帯の商品の需要が急速に高まったと感じます。旅行や外食などの支出が減った影響もあると思いますが、それだけでなく、商品に意味やこだわりを求めるようになったのだと思います。お客様が納得する価値を提供することが、今後ますます重要になってくると考えます。


—— 2025 年までに、商品すべてにサステナブル原料を使用する目標を掲げた「スマイルカカオプロジェクト」の状況を教えてください。


河合 2021 年 7 月期に使用したチョコレートのうち、25% がサステナブル原料でした。これは当初想定していたよりも早い進捗状況です。サステナブル原料を一部使用した商品は増えていますが、最大の要因は既存の対応商品の販売比率が増えたことです。2022 年の春頃から使用開始できるように準備している原料もあり、今後も 2025 年に向けて着実に使用量を増やしていきます。
 世の中の SDGs への関心は高まっていますが、チョコレートに関してはまだ意識が高くないと感じます。引き続き大きな課題ですが、この解決はブラックサンダーが担わなければという思いです。

—— 海外事業の状況はいかがですか。


河合 台湾はコロナ禍の影響が少なく着実に売上を伸ばしました。中東はコロナ禍の影響が大きく、小売店様には興味を持っていただけているものの商談が進められない状況でした。インドネシアもコロナによる被害が甚大で、今は状況が落ち着いた後に向けて次の展開の準備を進めています。

—— 最後に、中長期的な視点での貴社の戦略をお聞かせください。

河合 ブラックサンダーにはまだまだ多くの可能性があると感じており、食シーンの訴求やプレミアムラインの強化によってブラックサンダーブランドを拡大していきます。一方で、新ブランドの確立は長年の課題であり、新しい柱を作るべく新商品開発と販売準備を進めています。中長期的には海外展開をもっと進めていきたいと考えていますが、それ以上に国内で必要とされるメーカーになることが重要だと考えています。

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