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9月号トップインタビュー・チロルチョコ株式会社 代表取締役社長 松尾裕二 氏2021.09.28(火)

ストーリー仕立てて「きなこもち」復活 
ファンベース強化しSNS施策も積極展開

—— 今秋、主軸となる販売戦略をお聞かせいただけますか。


松尾 3月で終売した「きなこもち」の復活が1番大きな軸となります。この半年間、製品キャラクター「もちくん」の冠がついた製品を世の中から“消し去り”、終売前から毎週 Twitter で連載していた四コマ漫画のストーリーのピークを発売直前の 9 月 24 日に設定して、復活への話題作りを仕掛けました。
 その他、通常製品と異なるフレーバーで揃えた「冬のバラエティパック」の展開、大袋製品「ミニミルク」「ミニビス」の販売強化をあわせた3軸を中心に、この秋冬は注力していきます。

—— 「きなこもち」は年間定番品から期間限定に再び戻るのですね。


松尾 2018 年から通年販売していますが、それ以前は冬季限定製品として、業界では風物詩的に捉えられていたこともあり、ブランドの価値を再認識していただく意味でも原点に立ち返ろうと、10 月から12 月までの間に集中的に販売することにしました。毎年、想定以上の売上となっていた時期もあるほど愛されているブランドですから、黙って終売・再販させるのではなく、四コマ漫画で半年間逃げていた「もちくん」が戻ってくるという話にして、楽しさを演出することにもこだわりました。

—— このような SNS を活用した貴社のプロモーションは業界でも注目されていますが、4 月の組織再編では、マーケティング室を新設されたのですね。


松尾 これまで開発室が担っていたSNS 担当と広報担当、そして新たにファンベース担当を加え、3名の部署を創設しました。社長直轄の組織として、より消費者コミュニケーションを深める目的で、様々な施策に取り組んでいます。


—— ファンベースの施策とは、具体的にどのような内容でしょうか。


松尾 当社の製品を購入されるお客様はどんな方なのか、どのような理由で興味を示してくれたのか、という思いを起点にファンとコミュニケーションを図り、さらにチロルチョコを好きになってもらおうという取り組みです。例えば、チロルチョコの包装紙を収集しているファンの方など、あらゆる面から当社の魅力を SNS で発信している方に直接メッセージを送り、実際にお会いして話を聞き、生の声を社員間でも共有して日々の業務に活かしています。これは、ファンの方も社員もうれしいですし、「『あなた』を笑顔にする」という企業理念にも繋がることです。今後は、状況次第ではありますが、イベントなども開催して、よりファンの方達と近づける機会を作っていこうと考えています。

—— 最後に、復調しつつあるチョコレート市場の展望についてお考えをお聞かせください。


松尾 ここ数年で、節約志向、ご褒美需要、機能や素材の追求に拍車がかかる健康系カテゴリーなどの方向性が表れていますが、コロナ禍が続く現状においては、節約志向の製品が今後も伸びるでしょう。そうなると当然、価格勝負となるわけですが、当社のような中小メーカーができることは、他社と比べると割高だけれども、美味しいし面白い会社だからいいよね、と思ってもらえるような製品をどれだけ生み出せるかということです。このような時代においても、話題作りや味の再現性の高さといった強みを活かし、当社が持っているアイデンティティや資産がきちんと商品にも表現できれば、厳しい市場競争にも生き残っていけるものと思っています。

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