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【米菓メーカー・トップインタビュー】岩塚製菓㈱ 代表取締役社長 槇 春夫氏2022.04.25(月)フードニュース

※本企画は「フードニュース4月号」でも掲載しています。

未来志向で“ピンチをチャンス”に変えていく

―― 2022年度3月期の業績はいかがですか。
槇  昨年12月の第3四半期までは、価格競争の激化や原材料・燃料費の高騰の影響が顕著に現れ、加えて固定費負担も大きく、売上は133億6100万円、前年同期比97.5%と、引き続き「減収・減益」で推移していました。
 しかしその後、状況がやや持ち直して2月時点の売上は同100.1%と回復し、2022年3月期ではほぼ前年越えの見込みです。利益に関しては、新工場建設の減価償却費など固定費負担の要因からやや減少し、全体としては「微増収・減益」に落ち着きそうです。

新規中期計画スタート。スローガンは「新しい岩塚価値の創造」

―― 今年は創業75周年に当たる「節目の年」とのことですが、新たな経営計画や新商品などについてお教えください。
槇  今年の3月までが67期の2019年から進めてきた中期計画「プライド・BEIKAプラン」の最終年度でした。特に直近3年の活動テーマは基盤整備で、75億円以上の設備投資を行い、「BEIKA Lab」と「長岡新工場」という研究施設と新工場を建設しました。
 4月からの第70期は新しい中期計画がスタートします。これからの10年を方向づけていくスローガンとして「新しい岩塚価値の創造」を掲げ、まず直近の3年間で価格競争からの脱却を目指し、通常価格の販売を定着させるアイデアと方法を模索していきます。
 また、国産米へのこだわりを大切にしながらも21世紀の生活様式を意識した、サステナブルな企業活動を目指していきます。
 そのひとつとして、プラスチックゴミの削減を目指して包装形態の見直しを進めています。具体例のひとつとしては新商品の「70g かるカロ 海かおる塩味」や、「同 旨みだし醤油味」で試みたスタンドアップパウチで、トレーを使わず、どこでも手軽に食べられる包装形態を意識しています。
 さらには、米菓の新しい可能性を広げていき、あられ・おかき、煎餅とは違う売場で、他社と競えるような商品の開発を目指します。
 例えば「80g バンザイ山椒」や「80g チーズあられ・ZOOチー」は今までの包装とはデザインの発想を変え、ゆるくてポップなイラストを採用して、若い人たちにも手にとってもらえるような可愛らしいイメージにしています。ちなみに「バンザイ山椒」に描かれている猫のキャラクターは多くの方に親しまれています。
 ふたつ目は、新機軸商品の開発です。米菓の新しい価値の創造を目指して2021年に設立した「BEIKA Lab」から、ぬれおかきをチョコでコーティングした「チョコロモ」を発売し、1/25から「新潟味のれん本舗」でweb限定で販売しました。
 幸い、Twitterなどで評判になり、情報が順調に拡散しています。


―― コラボ商品も積極的に開発・展開されていますね。
槇  北海道の上川郡東川町と「JAひがしかわ」、弊社の3者間でパートナーシップ協定を締結し、昨年10月に北海道エリアでソフト煎餅の「25gふわっと雪どけ煎餅」を発売しました。これは大雪山の雪解け水で育んだ「ゆめぴりか」という品種の東川米を使用し、アレルゲン28品目や化学調味料は使わず、お子さんからご高齢の方まで安心して食べていただける商品です。
 また12月には、山梨県の桔梗屋監修の「きなこ餅 桔梗信玄餅味 18枚」が期間限定で発売され、通常の企画商品の3倍以上の販売量となりました。
 今年は1月に弊社北海道工場と千歳高等学校のBSC(ビジネス・スタディ・クラブ)が共同開発した米粉スナックの「しゃけっと石狩鍋風味」を、3月には同工場と支笏湖漁業共同組合が千歳市の協力を得て共同開発した、醤油味の揚げせん「35g 大人のおつまみ 支笏湖チップ魚醤味」を北海道エリアでリリースしました。
 これらの企画の大半は地域ごとの食文化とコラボしており、その背景には地域の文化を向上させ、豊かなものにしながら、米文化を広めていきたいという弊社の想いがあります。そしてその先には、日本独自の伝統である米文化を世界に広めていくという、前中計「プライド・BEIKAプラン」のサブタイトルとして掲げていた、「『米菓』から『BEIKA』へ」に対する思い入れも反映されています。

発信力の強化とSDGsへの取り組みを加速

―― 今後の重点施策に関しては、どのような予定がありますか。 
槇  弊社の商品や企業活動について、お取引先様からは「とても素敵なことをやっていますね」と評価をいただくことがあるのですが、お客様までは伝わっていないことが多かったので、今回、その課題を解決すべく「ソーシャルコミュニケーション室」という新部署を立ち上げました。現在3人体制ですが、SNSへの取り組みを強化し、発信力を高めていきます。
 ほかには、SDGsへの取り組みがあります。商品の包装については、可能なものからトレーを抜いてプラスチックの使用量の削減を進めております。また順次、太陽光発電にも取り組んでいます。
 さらには昨年9月から、かきもち商品の割れたものや欠けたもの、粉状になったものを培養して腐葉土にし、田んぼに戻す循環型の生産体制にも着手しています。また、お米のとぎ汁は栄養価が高いので、その活用も模索しています。
 やはりSDGsやサステナブルを前提とした21世紀のライフスタイルを考えていくと、「今までの米菓でいいのか?」という疑問が頭をもたげますし、環境や社員への配慮として、工場のロボット化・半無人化も推進していかなければならないと強く意識しています。


付加価値をつけた提案を行い、価値が高まる売場を作る

―― 現在、米菓業界は増産に関して難しい対応を迫られていますが、御社はいかがですか。
槇  2月に米菓業界にとって想定外の事態が発生し、現在も市場への対応で難しい状況にありますが、今こそ“ピンチをチャンスに”と捉え、未来志向で前向き進んでいく所存です。現在、全社を挙げて増産体制にて対応していますが、米菓パイオニア企業として、米菓の菓子全体の売上比率をもっとアップさせていきたい。また、適正価格での販売に踏み出すチャンスだと考えていますので、先にご紹介した「きなこ餅 桔梗信玄餅味 18枚」のコラボのように、付加価値をつけた提案を積極的に行い、価値が高まる売場に変えていきたいと考えています。

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