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【2024年 新春トップインタビュー】㈱ブルボン 代表取締役社長 吉田 康 氏2024.01.26(金)フードニュース

※本企画は「フードニュース2024年新年特集号」にも掲載しています。

― 創立100周年を迎えられる今年の抱負をお聞かせください。
吉田 当社の前身「北日本製菓」は、関東大震災翌年の1924年11月に設立し、栄養価と保存性が高いビスケットの製造からスタートしました。「災害時に役に立つ企業」という創業の原点を礎に、次の100年も“ずっと続く笑顔”をお客様に届けることを目指した取り組みを推進していきます。
 また、次の100年のさらに先、200年、1000年と長い時間軸の中で、社員が「なにが正しいか、なにをすべきなのか」といったことに対し、長期的な視点を共有し、同じ方向性で進んでいくことが重要だと考えています。
 2024年も先行きが不透明な社会情勢が続き、難しい経営の舵取りとなることが想定されますが、物流面の施策、また、いわゆるSDGs関連施策において、確かな手を打っていき、社会的な貢献度を高めつつ、発展させていきたいと考えています。


― 貴社の特徴の1つとして、全国47都道府県に拠点(営業所)を設けている点が挙げられますね。
吉田 各企業様が合理化や人手不足の観点から、拠点の統廃合を進められる中、営業所を維持していることはある意味逆の方向性に進んでいるように感じるかもしれません。しかし、各地域に根付くからこそ得られる情報があり、各地域で深堀りすることで提案できることがあると考えています。
 また、各都道府県、地域のニーズを踏まえた企画提案とともに、各地の営業所が中心となり、さまざまな関係者を巻き込み、産学官連携のもと、地域独自の新たな商品開発、サービス提供に繋げていく取り組みが進むことも期待しています。
 このほか、ご当地のマスコットキャラクター等とのコラボ、他社様とともに地方自治体様と共創プロジェクトを行うなど、様々な可能性があります。
 これらの実現に向けて当社工場では、小ロットのOEM製造等にも対応できる機械導入や技術整備を進めており、この先当社が起点となり、地域活性化に貢献することができれば幸いです。


― 2023年度の実績についてお聞きします。2024年3月期決算の中間決算(2023年3月~9月)は増収・増益となっていますね。
吉田 COVID‐19(新型コロナウイルス感染症)の5類移行に伴い、人流が回復し、商品とのタッチポイントが増える一方、円安進行や原材料・エネルギー価格の高止まりによるコストアップ、また、消費者の節約志向への対応も求められるなど、難しい局面が続きました。
 そうした中、価格と付加価値のバランスを高めた魅力のある商品開発や、様々な需要に対応した豊富な品揃え、また、企画提案型の営業活動を推進してきました。チョコレートやキャンデーに加え、ファミリーサイズ商品群や、多彩な品揃えで選ぶ楽しさを提供する「プチ」シリーズなどが順調に推移し、中間決算は全体として増収増益で着地することができました。
 ただ、カテゴリーやブランドごとに環境は異なり、コストアップの影響から、残念ながら休売した製品もいくつかあります。そうした中、お客様から、再販を望むお問い合わせをいただくこともあり、改めて当社それぞれのブランド・商品に愛着を持っていただいていることを実感しました。
 ですから、商品がなくなってしまうことは回避しなければならないと考えていますし、休売した商品についても、それぞれの商品の価値やターゲット層を深掘りし、仕様変更、リニューアルの検討を行うことも視野に入れています。


― 「アルフォート」「アルフォートミニチョコレート」の動向はいかがですか。
吉田 「アルフォート」など、ビスとチョコを組み合わせたお菓子の需要は高く、さらなる市場の伸長が期待されます。
 2023年に発売20周年を迎えた「アルフォートミニチョコレート」シリーズでは、9月に「同サブレ」を発売しました。ビスケット部分をサブレに変更する初の試みを行い、ブランドの幅を拡げるとともに、若年層へのプロモーション強化など購買層の拡大を図っていきます。

― 今年は「ルマンド」が発売50周年を迎えられますね。
吉田 「ルマンド」は創立50周年を記念して開発された商品で、「ひとくちルマンド」、「贅沢ルマンド」シリーズ等も展開しています。2023年はパウチタイプの「ひとくちルマンド」が好調に推移し、12月には新商品となるチョコレートのくちどけにこだわった冬期限定商品「同くちどけ」を発売しました。今後も商品開発やプロモーション施策を展開し、ブランド全体の底上げを図っています。


― グミ製品の展開はいかがですか。
吉田 伸長し続けるグミ市場において、ソフトタイプのグミ製造に強みがある当社の特徴を活かし、「フェットチーネグミ」、「しゃりもにグミ」といったグミブランドの育成と活性化を図っていきます。
 外国に目を向けても当社商品に類似する商品はあまりないと考えており、アメリカ市場でも柔らかい食感を高く評価していただき、順調に売れ始めています。競争が激化している市場ですが、食感を初めとする独自性を活かし、シェアを拡大させたいと考えています。

― このほか、注力していく商品などはございますか。
吉田 当社魚沼工場の雪室貯蔵庫で熟成させたカカオ豆を使用した「雪室ショコラ」は、雪を利活用し、当社が拠点を置く雪国新潟だからこそ生まれたチョコレートで、独自性が高い商品です。雪室を利用して熟成させる製法は世界初なのではないでしょうか。
 低温熟成によってクリアで繊細な味わいのカカオ豆となり、チョコレートにすると、余分な苦みや渋みが削ぎ落され、洗練された味わいになることがわかりました。このような特徴を広く知っていただけるよう、今後も強く訴求していきます。
 また、雪室を活用するメリットについて研究・技術開発を進めていくとともに、「アルフォート」など自社ブランド商品に雪室で熟成させたチョコレートを使用するなど、使用の幅を広げることも視野に考えています。


― 最後に創立100周年となる今年の、施策展開の方向性等についてお考えをお聞かせください。
吉田 チョコレートやビスケットの製造工程において、自動化など生産効率を高める設備投資の余地は十分にあると考えています。設備導入にあたっては、長期的に愛され続けるブランドであることが重要であり、ブランドを高める施策とともに、機械化の推進を図っていきます。
 また、冷凍技術等を取り入れた新商品や、新技術開発など、新たなカテゴリーへ挑戦することも大切です。このほか、前述した各地域、各営業所での役割を担う人材を育成・確保するためにも、新たな人事制度等の検討も必要かと考えています。
 100周年を迎える本年、当社の可能性を拡げる布石を打って、次なる成長に繋げられるよう、邁進していく所存です。

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